※本稿は、森下彰大『戦略的暇 人生を変える「新しい休み方」』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
リモートワークで生まれた「長く不均一な労働」
2020年に未曾有のコロナ禍がやって来たとき、世界中が新しい働き方への移行を余儀なくされました。多くの業種でリモートワークを取り入れる中、通勤や会議に要する移動がなくなることや、デジタルツールを駆使した自動化が進むことで、業務は効率的になり、労働に費やされるストレスや時間が減るのではないかとの期待もありました。
しかし海外では、急激なワーク・シフトによって起きる弊害がパンデミック初期から指摘されていたのです。その弊害の一つが、「長く不均一な労働」です。2020年7月に全米経済研究所が発表した300万人以上を対象にしたデータ分析によれば、従業員がオンライン会議に費やす時間はパンデミック前と比べて11%も増加しています[1]。
海外の報道では、認知的負荷の高いビデオ会議にはストレスがかかりやすいとされ、「Zoom Fatigue(ズーム疲れ)」という言葉も生まれました。

プライベートとの区切りがつけられない
Microsoft社の調査書「ワーク・トレンド・インデックス」では、同社のチャットサービスの平均的なユーザーは業務時間外に1人あたり42%も多くチャットを送信していると報告されています(2021年と2022年の同月データを比較[2])。同報告書では、これまで仕事のピークは午前と午後の二つだったのが、コロナ禍で「第三の仕事の山」が夜にできているとし、日常生活の中で仕事とプライベートの区切りをつけられずに心身に支障をきたす人が増えるリスクが指摘されているのです。
新しい働き方で効率的な働き方が促され、労働環境が大幅に改善されたのかと考えると、一概にそうとは言えないようです。新しい働き方が産み出した新たな問題も、浮上しているのですね。