「お得」につられて食材を大量買い

ではここで、上野さん夫妻の真逆の例もご紹介しておきましょう。小幡さん一家(仮名/40代)は、とにかく「セール」「お得」に目がありません。5人家族ということもあり、買い物はまとめ買いが基本。ブラックフライデーといったセール期間にまとめて飲み物やお菓子などを箱買いし、肉などもコストコなどで大容量パックを購入後、小分けにして冷凍するようにしていました。スーパーで買うより割安になっているものが多く、お得に買い物はできているように見えますね。

しかし、小幡家の冷蔵庫を見てみると、家族それぞれが半端に飲み残したペットボトルがゴロゴロと散乱。また、大容量ボトルで買ったドレッシングは使い切れず、賞味期限切れになっていました。せっかく小分けにして冷凍した肉も、部位などを記載していないので何の肉かわからず、長期間入れっぱなしだったために霜までつき、ますます判別不能の代物と化していました。「お得」につられて買った食材の多くが使い切れないまま無駄になり、結果的には「割高」になっていたのです。

冷凍肉
写真=iStock.com/Qwart
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「お得に買物」がストレス解消になっているのでは

小幡さんのクローゼットも拝見したのですが、たくさん洋服は持っているのに、普段着ているのは決まった数着のみで、残りのほとんどがタンスの肥やしになっていました。クローゼットと冷蔵庫の関係は相関していることが多く、冷蔵庫が整理されている方は、クローゼットも整理整頓されている場合が多いです。

小幡家のケースでは、冷蔵庫もクローゼットもものは多いのに実際に使っているものは少なく、残りのほとんどが無駄になってしまっていたのです。家計簿を見せてもらうと、毎月赤字にならないギリギリのラインで推移していました。

ただ、小幡さん一家の例は珍しいものではなく、むしろ、忙しい現代人にとって「お得に買物をする」という行為自体がストレス発散になっているのではないかと思いました。というのも、知り合いのあるエリート女性のお家に行くと、段ボールが山積みになっているんですね。「これは一体?」と聞けば、「夜な夜なネットショッピングしちゃって、開けられないまま置いてある」と言います。ひとつひとつは決して高くないらしいのですが、「買う」という行為自体が目的となっているので、封も切らず使わないままになってしまっているのです。