社外取締役は「大株主の代理人」、意見を言うべきだが…
海外の社外取締役は「大株主の代理人」ということが大前提になっているが、日本企業では単なる「社外」の取締役で終わっているケースが少なくない。日産自動車の社外取締役にはレーシング・ドライバーがいる。商品開発などのアドバイザーとしては悪くないが、企業経営という見地からそれが妥当なのかは甚だ疑問である。だから「ホントにこの人たちに企業経営を委ねていいの?」という違和感がつきまとうのだ。
その一方、社外取締役として正しい役割を担っていても批判の対象となる。ルノーから派遣されてきた日産の社外取締役は、判断が苦手で操りやすいから内田誠前社長を推挙したとの疑念があ
そもそも株式公開は、家族的経営の日本企業に向いていない
よく言われているように、ルノーにとっては、日産自動車が自動車業界で生き残るよりも、株式が高値で売れることの方が大事なのだ。また、日産自動車で社長交代を主導したといわれるのが、メインバンク・みずほ銀行出身の社外取締役である。かれも社外取締役としては間違ったことはしていない。株式会社というものは株主の意思が重要で、従業員の都合など二の次、そういう仕組みだからだ。
日本人はカイシャに対して単なる職場以上の感情を抱いている。だから、カイシャが売買の対象になることが許せないのだろう。従業員もそうだし、創業者一族もまたその通りだ。だから、大正製薬やセブン‐イレブンのように、創業者一族が企業買収して非上場化し、他社から買収されないようにする動きが出てくるのだ。
とどのつまりは、株式会社制度って、日本人の考え方・感覚に実は適合していないんだと思う。
1963年北海道生まれ。國學院大學経済学部を卒業後、ソフトウェア会社に入社。勤務の傍ら、論文・著作を発表。専門は企業集団、企業系列の研究。2005~06年、明治学院大学経済学部非常勤講師を兼務。06年、國學院大學博士(経済学)号を取得。著書に『企業集団の形成と解体』(日本経済評論社)、『日本の地方財閥30家』(平凡社新書)、『最新版 日本の15大財閥』『織田家臣団の系図』『豊臣家臣団の系図』『徳川家臣団の系図』(角川新書)、『三菱グループの研究』(洋泉社歴史新書)など多数。