高度成長期を経てバブル崩壊、株式持ち合いができなくなった

ところが、その株式持ち合いが維持できなくなってくる。バブル経済崩壊で業績が悪化し、リストラでクビ切ったり、店舗や工場を閉鎖したり、不動産を売ってもカネが足りん……という時、「そうだ。ヨソの会社の株、あれも売っちゃえ」ということになった。これを「持合い崩れ」という。日本の株式持ち合いを実質的に支えていたのは金融機関、中でも銀行と生命保険会社である。この二大巨頭がそろいもそろってバブル経済で大きな疵を負い、持株を処分せざるを得ない状況に追い込まれた。

だからといって株主がいなくなったわけではない。誰かが売られた株を買っている。それが外国人投資家だった。最初は少数派だった外国人投資家の比率が高まってくると、外国人投資家からクレームが寄せられるようになった。かれらの感覚は戦前の日本に近い。

「取締役は株主の意を汲んで動くもので、取締役会で決めた通りに、役員が企業を運営していくんだよネ? どうも日本のカイシャは違うデス」

1997年にソニーが「執行役員制度」を導入し、それが普及

一時期は、外国人投資家が株を買ってくれなきゃ株価が下がるという状況にまで追い詰められ、どうにかせざるをえなくなった。そこで、1997年にソニーが導入したのが、「執行役員制度」である。

従業員出身の取締役を減らして、有名な財界人や高名な学者・有識者を社外取締役に選び、取締役会を構成する。そして、新たに執行役員という部長と役員の間のような役職を作って、取締役会で決めた通りに執行役員が企業を運営していく。そういう仕組みだ。この執行役員制度に多くの会社が飛び付いた。その後、いろいろ名前や役割が変わったりしているが、基本的にはその流れが続いている。

フジテレビ前社長・港浩一氏、2025年1月27日
撮影=石塚雅人
フジテレビ前社長・港浩一氏、2025年1月27日