若い同僚との働き方に悩む日々
「同僚も上司もみんな20代の女性でした。配属されて最初のころは、若い子にわからないことを聞けず、知ったかぶりで行動しては失敗してしまう……というパターンに陥っていました。これじゃだめだよな、と。ただ『わからないから教えて』とそのまま聞くのも、一応私がサブマネージャーという立場で入っている以上、メンバーの不信感やモチベーション低下につながる気がしてどうしようと」
ぐんと年下の同僚との人間関係に悩む人は、転職が珍しくなくなった今、多いはずだ。柳井さんも例外ではなく、しばらくは試行錯誤の日々が続いた。
悩んだ結果、ふとした会話をきっかけに柳井さんは、年が近いベテランのアルバイトの女性にわからないことを聞くようになった。年が近いと肩肘はらずに聞きやすく、またベテランなので、何を聞いても知っていてとても勉強になった。
しかし仕事を覚えただけでは、部下との心の距離は縮まらない。そんなときに上司がかけてくれた言葉が、その後の柳井さんのキャリアを築く柱となったという。
「圧倒的になれ」
「圧倒的になれ。圧倒的であれば誰も文句は言わないから、と。それで自分の圧倒的な部分ってどこかなと考えたときに、コミュニケーション能力だと思いました。私の祖父は政治家で、家にはいつも誰かしらがご挨拶に来ている状態。人を立てることや言葉遣いは祖父からたたき込まれており、相手に心を開いてもらうコミュニケーション能力は自然に鍛えられていました」
そこで柳井さんが、若い同僚たちに行ったのが共感と伴走だった。
「もちろん全員ではないのですが、女の子は、プライベートでの出来事や体調がそのまま仕事に影響する場合もあるので、そこのメンタルケアは大事にしたいなと。そのあたりの共感や伴走は、女性同士、自然とフォローできる部分かなと思いました。みんなのお母さんみたいな気持ちで接しようと」
そこから柳井さんは、失恋した子がいたらゆっくり時間をとって話を聞いたり、「休憩しておいで」と寄り添いを見せたり、結婚とキャリアの両立に悩む子がいたら、これまでの人生経験をふまえてアドバイスしたりしているうちに、だんだんとチームに打ち解けていったという。

柳井さんいわく、キャリアを止めることになった3年間の子育て経験もここで大きく役に立ったようだ。