賢い医者の数値の考え方
かつて、私の中性脂肪の値は600mg/dlほどでした。正常値は30〜149mg/dlとなっています。それでも体調に問題がないためにしばらくなんの治療もせずにいたのですが、それがある時測った健診の際にとうとう1000mg/dlを超えてしまったのです。
それまでとくに何も言わなかった私の主治医からも「さすがにこの数値は問題です」と言われてしまいました。中性脂肪の値が1000mg/dlを超えると、急性膵炎のリスクが高まると言われています。
今は問題ないとしてもこれは治療すべきだと私も判断し、以来、投薬治療を続けています。
ここで注目していただきたいのが、中性脂肪の正常値は30〜149mg/dlであって、150mg/dlからは異常値になるということです。
けれども、本当の本当にリスクが高いと主治医も私も納得したラインは1000mg/dl、かなりの差があります。通常の異常ラインはかなり低く見積もっているということです。
世の中には、異常なほど正常値にこだわる多くの医者がいます。けれども、賢い医者は「さすがにこれ以上はまずい」というラインを心得ています。
私の主治医も600mg/dlの時はとくに何も言わずにいてくれたのですが、1000mg/dlを超えてはじめて「急性膵炎になるリスクが高いので治療すべきだ」と教えてくれたのです。

このように、本当に危なくなった時に適切に教えてくれる医者は信頼できます。あまりにも厳格にとらわれすぎず、ゆるい考え方で検査数値を考えた方が、本当のリスクを正しく回避できると考えています。
220mmHgまで上がってしまった血圧を4、5年放置
私がかつて勤務していた浴風会という老人医療専門病院では、老人の正常値を知るために併設する老人ホームでいろいろと追跡調査をやっていました。
その結果、血圧130mmHgと150mmHgでは20年後の死亡率に差が認められませんでしたが、180mmHgになると明らかに死亡率が高まることがわかったのです。ですから、血圧は180mmHgになったらなんらかの対処をすべきだと考えるようになりました。
そう考えていたにもかかわらず、220mmHgまで上がってしまった血圧を、4、5年間そのまま放っておいた私です。
計測するたびに200mmHgを超える数字を目にしながら、「昔の人と違って血管が強くなっているからこのくらいでも破れることはないよね」と自分に都合よく考えてしまっていました。実際に体調もよく、なんの不調も感じていなかったのです。
ところが、心臓ドックを受けた際に心エコーで異常が見つかってしまいました。
血圧が高いということは、心臓が激しく運動をしているということです。つまり、心臓の筋肉が分厚くなります。
心臓に限らず、どの部位の筋肉でも運動をすれば鍛えられます。心臓の筋肉の場合は鍛えられて分厚くなる際、外側ではなく内側が分厚くなってしまうのが普通です。そのため、心臓の中で血液を循環させるポンプの部分が小さくなってしまうのです。