スマホは認知バイアスを助長する

ソーシャルメディアの出現によって、自分に都合の良い情報や、自分の意見をサポートするような情報ばかりを集める傾向も出てくる。これを行動経済学では、「確証バイアス」と呼ぶ。

河原千賀『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』(PHPビジネス新書)
河原千賀『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』(PHPビジネス新書)

確証バイアスは、興味のある情報ばかりが提供されるアルゴリズムによって、増幅される。そうした情報を見ては、「やっぱり自分は間違っていない」と確証してしまう。

また、ソーシャルメディアやオンライン・コミュニティは、同じ興味を持つ人たちと出会えるし、つながっている感覚や、受け入れられている安心感が得られる。

その反面、自分と違う意見を持つ人や、自分の価値観に合わない人との交流を、避けることもできるので、やりとりしていない人たちの存在を受け入れにくくなってしまう。

同じ価値観を持つ人や、自分が受け入れられる情報のバブルの中にいると、それが全世界だと信じてしまうのだ。

このような「認知バイアス」に陥らず正しい判断をするためには、何をすればよいだろうか。ぜひ、「自分軸」を鍛えてほしい。

「自分軸」とは、自分勝手でわがままになったり、物事を感情や気分で判断したりせず、あらゆる価値観を受け入れるために必要な冷静で公正な判断軸のことだ。

「投資の神様」がガラケーを愛用していた理由

氾濫する情報は、いとも簡単に私たちの選択や行動を揺るがす。

投資の神様として知られるウォーレン・バフェットが、投資をする際の判断がブレないように、ガラケーの携帯電話を長年使っていたことは有名な話だ(最近、ついに貰い物のiPhoneに替えたが、電話をかけるくらいで他の機能は使っていないそうだ)。

ちまたに溢れる情報に翻弄されない強固な「自分軸」を持っていないと、投資の神様にはなれないのだろう。

言い換えれば、ウォーレン・バフェットですらバイアスにとらわれてしまうのだ。

河原 千賀(かわはら・ちか)
アメリカ在住ジャーナリスト

大阪生まれ。1988年よりアメリカ在住。大谷大学短期大学部幼児教育学科、カリフォルニア州立大学心理学部卒業、同大学院教育心理学部修士課程修了。アメリカ人と結婚し、3児の母となる。ロサンゼルスの幼稚園教師として勤務後、フルコミッション制の不動産エージェントに転職。離婚後、2018年より、ロス・パドレス国立森林公園内の、山々に囲まれたプライべートコミュニティに在住。星空の美しい自然の中で、人間として最高な人生とは何かを研究し、人間力を回復するための数々の活動を行なっている。著書に『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』(PHPビジネス新書)