適切な付き合い方を探る

デジタルデバイスとの付き合い方を根本から変えるのは容易ではない。

自己嫌悪に陥ってしまうかもしれないが、安心してほしい(それは決して、あなたの意志が弱いせいではない)。

テクノロジー企業は、人間の心理を熟知したうえで製品やサービスを開発し続けており、その流れには抗えないからだ。

だから先に述べたように、デジタルデバイスとの適切な付き合い方を探っていかないといけないのである。

テクノロジーは私たちを操っている

ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスでマーケティング学を研究するアダム・オルターは『僕らはそれに抵抗できない――「依存症ビジネス」のつくられかた』(ダイヤモンド社)のなかで「大量消費のために、行動依存を流行らせる企業の企みがある」と主張する。

私たちが毎日、スマホやパソコンで多くの「アテンション」を払い、より長く「時間」を費やすこと。私たちの時間が、企業にとっては利益に変わる。注目すること、関心を払うことにお金が集まる構造になっているのだ。

検索傾向からあなたの好みや関心は把握され、気を引きそうな商品や話題を次々に提供し続けるのだ。

消費者はそういった広告に買わされるものかと警戒をするようになったものの、SNSでインフルエンサーが使っていると、つい欲しくなってしまう。

フォローしているインフルエンサーが、ジューサーを使って野菜ジュースを作るのを見ると、自分もそのジューサーを使えば、そのインフルエンサーのように健康で活発になれる気がする。

このようにネットを介した広告は、あの手この手で私たちの興味・関心を引こうと躍起やっきになる。

何気なく見ている情報は自覚していなくても潜在意識にどんどん取り込まれるから、この消費習慣を食い止めるのは容易ではない。

操られるのは、消費を促す行動だけでない。思考も無意識に操られている。

じつは、「意見」はとても影響されやすく、頼りにならないものなのだ。普段から周りに合わせて、意見をコロコロ変えたりしていないだろうか。有名な人が意見していると、そうなのかな、と鵜呑うのみにしていないだろうか。

フェイクニュースは、新たな社会問題になっている。脳は馴染なじみがあるものに、真実性を付加させる特徴があるので、正しくないニュースでも、繰り返されると真実に思えてきてしまう。

一度、情報が脳内に取り入れられると、それが真実であろうがなかろうが、その影響を取り除くのは難しい。そのニュースが感情を大きく動かす刺激的なものなら、なおさらだ。わざと、大げさに騒ぎ立てるのには、目論見があるのだ。

もう、おわかりだろう。

私たちは娯楽に満ちたソーシャルメディアを通して、ペットのおもちゃからワクチン接種の可否まで、あらゆる選択の影響を受けてしまっている。