NHK大河の主人公・蔦重が活躍した時代の江戸はどんな様子だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「昭和平成のバブル期にすこし似ている。経済が活性化した中で、江戸のに住む女性たちもあたらしいブランドや流行を必死に追いかけた」という――。
歌川広重筆・東都名所・吉原夜櫻ノ園
歌川広重筆・東都名所・吉原夜櫻ノ園(写真=メトロポリタン美術館/CC-Zero/Wikimedia Commons

吉原育ちだから大活躍できたNHK大河の主人公

みずからが板元(出版元)になり、自分で本を出版したい――。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」ではいま、そう願う蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)の姿が描かれている。

だが、地本問屋(江戸で出版された地本を企画、制作、販売する本屋)たちは、蔦重の才能を認めればこそ独立を認めない。蔦重は仕方なく、地本問屋の鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)のもとで「改」の仕事をすることになった。

「改」とは最新情報を集め、古い情報を上書きし、原稿を書いて編集する、雑誌の編集記者のような仕事である。鱗形屋は吉原遊郭のガイドブック『吉原細見』の板元でもあり、その編集にあたっては、吉原で生まれ育ち、だから吉原に精通し吉原人脈も豊富な蔦重は、大いに力を発揮できた。

ところが、第6回「鱗剥がれた『節用集』」(2月9日放送)では、そんな鱗形屋が摘発されてしまった。大坂の本屋が出版した『節用集』(用字集。国語辞典に近い)の偽板(海賊版)を摺り、売っていたのがバレたのだ。

第7回ではいよいよ蔦重が、鱗形屋に代わって『吉原細見』を出したいと希望を述べ、売れるガイドにするように工夫を凝らすことになる。