「親ガチャに失敗した」蔦重でも、周囲の人と共に成長できる
――何かを成し得た人ではなく、後ろにできる道、つながる人たちを描くというのは、現代的な視点ですよね。
【藤並】70年代や80年代、経済も右肩上がりで、努力すれば成功してヒーローになれるかもしれないと思えた時代には、立身出世の物語に共感が持てたと思うんですね。でも、今の時代、どうあがいても良くならないという暗澹たる空気がありますよね。
僕自身、好きじゃない言葉に「親ガチャ」というのがあるんですが、蔦重はいわゆる「親ガチャに失敗した人」。そんな人物でも、人を惹きつけ、周りと共に大きくなっていける。彼が何かを成し得るわけじゃないけど、誰かが何かを成し得るための手助けができるという点は、今を生きる人たちに共感してもらえるんじゃないかなと思っています。
――これからの時代劇におけるインティマシーシーンのあり方について、どんなことを考えましたか。
【藤並】今はどういう番組を作るかだけじゃなく、どうやって作るかまで問われる世の中になっていると感じています。第1回で「映像を見て驚いた」というご意見があったことについては、今後の番組作りの参考にしたいと思います。テレビドラマという誰でもアクセスできる媒体において、今後表現をどのようにしていくかは、われわれ制作者側がしっかり考えていかなければいけない部分だと改めて思っています。
取材・構成=田幸和歌子