「女郎の末路が悲惨であることや貧しさを際立たせたかった」

――そもそも裸を映す必要があったのかという疑問の声もあります。

【藤並】時代考証によると、女郎が身ぐるみを剥がされて捨てられていたとのことでした。それを描くことによって、女郎の末路の悲惨さや格差、貧困、悲しさなどが、より際立つのではないかと思ったんです。蔦重が幼い頃に優しくしてくれた女郎を亡くし、「自分が吉原の窮状をなんとかしなければ」と立ち上がるきっかけになる大切なシーンでもありました。

また、テレビドラマとしてふさわしい表現を議論する中で、生身の俳優さんにうつ伏せの状態で演じて頂くことに決めました。「うつ伏せで肌の露出ができる俳優さんはいますか」とお声がけしていく中で、実際に出演していただいた俳優にお願いすることになりました。

――演じられたのは吉高寧々さん、藤かんなさん、与田りんさん。AVに出演している人たちですが、「裸のシーンだからセクシー俳優に」と依頼されたわけではないんですね。

【藤並】いろんな事務所さんにお声がけしていく中で、応えてくださった方々です。見つからない場合には演出を変えることも考えていました。彼女たちには浅田さんに面談してもらい、後ろ側だけ映るので、表側はヌーブラをつけたり、インナーを加工して実際の肌が見えないようにしたり、敷物を敷いたりして、なるべく負担のないよう撮影しています。もちろん囲いなど目隠しもしています。

女郎役は全員インティマシー・コーディネーターと面談

――ちなみに、遺体役の人以外も、募集段階で性的な要素のあるシーンについては説明されているのですか。

【藤並】役名のある役者さんからエキストラの皆さんまで、特に女郎役の方々には全員浅田さんの面談を受けてもらっています。最初のオファーの段階から、女郎さんの場合、胸元が普通の着物よりも開いた状態になることや、冒頭の火事のシーンで逃げていくエキストラの方なども肌がはだけた状態で逃げ惑う役どころとあらかじめお伝えして募集したり……。

先にシチュエーション・条件を伝えた上で募集して、応募していただいて、われわれが選んだ後も浅田さんに面談してもらい、どこまでだったらはだけられるか、その上で支障がないようにどう隠すか、着替えはどうするかなど、浅田さんと女性の助監督が参加して細かく打ち合わせ、確認しています。女性だけでなく、男性もふんどしで逃げる人など、肌の露出がある方には浅田さんの面談を受けてもらっています。