「これで終わりだ」ではなく「これからだ」と思えるかどうか

そのときの受け止め方に、「これで終わりだ」という絶望型と、「これからだ」という希望型があります。

どんなに大きなショックでも、「これで終わりだ」と受け止めればほんとうに終わってしまいますが、「これからだ」と受け止めればパニックに陥ることだけは避けられます。すべての決着が着いたわけではないのですから、まだわからないと受け止めるのはしごくまともな反応で、少し冷静になればパニックは起こさずに済むはずです。

和田秀樹『感情的にならない本』(PHP文庫)
和田秀樹『感情的にならない本』(PHP文庫)

それなのになぜ、「もうダメだ」と思い込む人がいるのでしょうか?

出された結果をあまりに重く受け止めるからですね。まだなにも終わっていないのに、最終的な答えが出されたと思い込んでしまうのです。

たとえば部下の小さなミスにもカッとなって、「きみのせいでせっかくのプランが台無しじゃないか!」と怒るような上司は、ミスだけを大げさに受け止めてしまって、プランじたいはいまも進行中だということを忘れてしまいます。パニックを起こすときには、目の前の出来事が最終結果だと思い込んでしまうのです。

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。