子どもではなく「あなたはどう思うの」
変化のきっかけは、夫について友人に相談したときのことだった。夫の話をするうちに、子育てについても助言を受けるようになった。
友人のなかに「ひとりだけ過酷すぎるよ」、「それって家族の形なの?」と言う人がいました。「もっと自分のために生きていいんだよ」って言われて、そう考えても良いんだって思いました。
子どもにとって不安のない良いお母さんになるのが目標だったんですけれど、子どもじゃなくて「あなたはどう思うの?」と聞かれました。それで考え直すようになりました。このまま自分が耐えれば家庭は回って、何年かしたら落ち着くかもしれない。でも無理を続けて今、病気になってしまうことがあれば回復に時間がかかるかもしれない。それなら私は、いつ来るか分からない安寧を待つのではなくて、今の自分を大事にしたいと思いました。
自分だけが我慢して家庭を維持するのは不自然
「あなたはどう思うのか」と聞かれたとき、これまで自分の気持ちには目を向けず、「子どものため」ということばかりを気にしてきたこと、常に周囲の期待に応えようと行動してきたことに気がついた。そして、自分だけが我慢や努力を続けることで家庭を維持しようとすることは不自然なのではないかと思うようになった。
「不器用だけど強いお父さん」と「優しくてにこにこしたお母さん」がいる、この家庭を維持しなければいけないと思っていました。離婚したいなんて、優しいお母さん像を壊すから絶対にだめで、自分が耐えれば家族はバランスを保っていけるのではないかって。
でも相互に気遣ったり支え合ったりすることがなければ、自分からノーと言わなければいけなかったんだと気づきました。努力していたけど、むこうは私が好きでやっていると思っているから感謝もないし、当然だと思っていたんだなって。それからは、怒らせたらいやだなというのは考えないようにして、要求をはっきり伝えるようになりました。
夫との信頼関係を取り戻すことは簡単ではないと感じたが、たとえ修復できなかったとしても不均衡な関係を続けるよりはましだと考えるようになった。
幸い、村田さんには生活を維持できるフルタイムの仕事があり、子どもたちが最も手のかかる時期をひとりで乗り越えてきたという自負があった。夫がいなくてもそう困ることはないという気持ちは、家庭で交渉ごとをするうえで相手に強く出る後押しになった。夫も妻の変化に気づき、妻が自分の思う通りに動くわけではないと理解したようだった。