「あえて言葉には出さない」方法でアピール
美樹さんは、モノを使う人がどんな気持ちで使うのか、どうしたら使いやすいと感じるのか、家族の行動を観察して定位置を決めることにしました。
「片づけってモノを捨てるだけじゃなくて、生活しやすいように整えること。夫にも“あなたのことを見て気づかっていますよ”ということが伝わるといいなと思って」
あえて“片づけ”というワードを使わず、夫の動線上によく使うモノを配置することにしました。
例えば、お酒とおつまみを置く場所を近づけたり、仕事をする場所にゴミ箱を置いたり。脱ぎっぱなしだったパジャマを入れるカゴを用意すると、そこにちゃんと入れてくれるように。
片づけでモノを手放すと、夫の「なんで捨てるの」という声が何度も頭の中に聞こえてきそうになったと言います。でも最後まで片づけられたのは、「私が決めたからやるんだ」という美樹さんの強い気持ちがあったから。
美樹さんが変わることで、夫にも大きな変化がありました。仕事の繁忙期が終わる頃に、自分のモノを片づけることを約束してくれたのです。
「本当は『自分だけ片づけても変わるのかな』っていう不安もありました。でも、想像以上に変われました!」
勇気を出して、まず一歩を踏み出した美樹さんの行動が夫の意識も変えたのです。
家族だからわかり合えて当然、というのは幻想です。相手の気持ちを考えて自分が行動すること、相手の行動の裏にある気持ちを察すること。やってみると絆が深まりますよ。
夫婦関係が悪化する意外な理由
「部屋が片づいたら、夫婦関係が良くなりました」
片づけを終えられた受講生からこんな嬉しい声をよく聞きます。
私は片づけってコミュニケーションそのものだと思っています。まずは、自分の心とのコミュニケーション。「これはあなたにとって本当に必要なモノ?」「将来にも持っていきたいモノ?」と自分自身に問いかけ、モノの選別をする。
次に家族とのコミュニケーション。家族と話し合いをしながらモノの選別や置き場所を決めていく。この作業をやっていくうちに、自分や家族の本音が自然とわかるようになり、片づけ以外の問題にも向き合えるようになるのです。
家が片づかないときは、モノと一緒に感情もため込んでしまうことがあります。
離婚前の私がまさにそうでした。それまでは家事は好きだったし、片づけのやり方も知っていたのですが、そのときはまったく片づけられなくなりました。将来に対する不安が大きかったので、モノをため込むことで安心感を得ていたのかもしれません。
今、夫婦仲があまり良くないな、という人でも家を片づける中で夫との会話が増え、話し合いの中で関係が修復されていくかもしれません。一方、私がそうだったように一緒にいない方がお互いにいい生活ができると確信して、離婚を選択する方もいるかもしれません。
大切なのは、お互いが本心を隠さず、本当に望む未来を話すことだと思います。とはいえ、一方的に本音をぶつけてしまうとうまくいくどころか、余計にこじれたりしてしまいます。
片づけをやりながら夫とうまくコミュニケーションをとる上でぜひ知っておいていただきたいことを紹介します。