女性活躍と管理職になることはイコールではない

社会でも企業でも、男女で役割が分担されがちな時代は終わった。ベイシアでは、DE&I企業へとさらに歩を進めるため、性別に関係なく、社員全体の活性化を図りながら、誰もが活躍できる環境づくりを進めると意気込む。

「管理職としての知識などを学ぶ機会はもちろん、女性が牽引する組織で部下となった経験のあるメンバーは少ない。引き続き上司・女性・若手社員に対する研修は続け、それぞれが抱えるアンコンシャスバイアスを壊していきたい。そのために、ひとり一人の違いを認め合い、尊重し合う環境・職場をつくっていくことが重要だと考えます」(割石さん)

人事・管理事業部人事企画部・部長の笠木智映子さんは、さまざまな企業がダイバーシティを進める今、ベイシアらしさのある多様性を広げ、誰もがしなやかに働けるようにしたいと語る。

「ひとり一人の違いを社員全員が意識できているかと言えば、まだ道半ばです。もっとキャリアアップしたいと思う、思わないも本人の自由です。まずは個人個人が自分のいい部分を発見し、認めて、それを会社のプラスになるように生かしてもらうこと。ひとり一人が自分らしく成長できる機会をつくり、成長の土台を育てるのが私たちの仕事だと思っています」(笠木さん)

人事・管理事業部 部長の笠木智映子さん
写真提供=ベイシア
人事・管理事業部 部長の笠木智映子さん

女性活躍=管理職になることではない。まさにベイシアが掲げる「ひとり一人の違いを認める」ことで、役職の有無を超えてすべての女性が自分らしく活躍できること。それこそ、ダイバーシティの根幹でもある。

商品マーチャンダイズ事業部で商品戦略リサーチャーをしている大山静香さん(38歳)は2児の母。現在、8時50分〜16時10分の時短勤務を続けている。入社3年目で小型店舗の店長を経験後、第1子出産を機に時短勤務を選択。12年ほど管理職から離れている。

「出産前は仕事中心の生活でしたが、出産後は仕事とプライベートは半々。店長時代にはなかなか思いがおよびませんでしたが、時短経験を経るごとに、子持ちで働く女性社員の気持ちが理解できるようになりました。当時、私の前に出産後仕事に復帰する先輩は少なかったのですが、最近は復帰が当たり前。私自身、フルタイム勤務に戻る時期、やりたいことのビジョンが明確になったことで、仕事と家庭の両立に対して非常に前向きになりました。管理職をめざすというよりは、もっともっとさまざまな経験を積んでいきたい」と、仕事への意気込みを新たにしている。

商品マーチャンダイズ事業部で商品戦略リサーチャーの大山静香さん
写真提供=ベイシア
商品マーチャンダイズ事業部で商品戦略リサーチャーの大山静香さん

「ひとり一人の違いを大切にする」同社のダイバーシティには、シニア層の活躍も含まれている。

「現在定年は、60歳。そこから65歳まで嘱託契約になり、それ以降も雇用契約の形態を変えながら、75歳まで働けるようになっています。75歳までの雇用延長は2022年に制定しました。多くの社員が手を挙げ、現在も継続して働いています。もちろん、店舗社員だけではなく、本部社員も同様。特に法務などの部署では、専門知識の蓄積が重要。年齢に関係なく、それまでの経験を生かしながら働き続ける土台はできており、制度は今も見直し続けています」(割石さん)

女性活躍だけではく、ひとり一人の状況を鑑みながらその能力を最大限に活用する土壌は整った。これからは、その土壌にいくつもの個性的な花をどう咲かせるかが求められる。ダイバーシティ企業へと加速するベイシアの今後が楽しみだ。

プレジデント ウーマン編集部