女性管理職を生むには上司の意識改革が必須

そう決めた背景には『図解! ダイバーシティの教科書』(プレジデント社)に書かれていた「女性が管理職になりたくない原因は上司にある」という言葉だった。

「改革の順序を間違えれば意味がない。一定のストーリー性が重要だと考えました。上司の意識改革の後、女性社員の意識を変容させようと。成長機会を奪わないよう人数は限定せず、希望者は全員参加できる研修としました」(割石さん)

募集した「女性向けリーダーシップ研修」には、想像を上回る数の女性社員から参加希望の手が挙がった。1年を通じて月1回の動画講義を中心とする研修内容も「空き時間に研修が受けられる」と好評だったという。

「明確なビジョンを抱くようになったなど、意識変化は全員に見て取れます。また、受講者の多くにキャリアを意識した行動変容が見られます。男性社員からも女性活躍に対してネガティブな反発はありませんでした」(割石さん)

女性活躍を加速させた2022年から2024年。同社では16人の女性管理職が誕生した。

藁谷広美さん(33歳)が嵐山店店長に就任したのは、2023年7月。入社から10年目、昇進のスピードは遅いほうだと振り返る。ベイシアでは、平均して入社5、6年で店長になる。それまで、部門マネージャー、副店長と順調に昇進してきたが「店長にはなれないかな」と思っていたと藁谷さん。

ベイシア嵐山店店長の藁谷広美さん
写真提供=ベイシア
ベイシアフードセンター嵐山店店長の藁谷広美さん

「負けず嫌いですが、プレッシャーに弱い。店長にはなりたいけれど、なれないだろうなと思っていました」

しかし、女性リーダーシップ研修に参加し、「なりたい」気持ちが強くなった。だからこそ、抜擢されたときは心底嬉しかったという。

「店長には店舗の経営数値を見る権限が与えられます。数字管理はまだまだ苦手ですが、気持ちだけでは解決できない店舗課題を数字で考えられるようになりました。今ではプレッシャー以上に、やりがいを感じています」

自身がめざす女性管理職像は「男性的なキャリア女性ではなく、従業員も顧客も女性が多いからこそ、女性の視点を大事にしたい。長く働き後輩たちのロールモデルになりたい」と意欲満々だ。

2023年に入社した泉 桃花さん(25歳)は、渋川こもち店の副店長として活躍している。副店長の辞令を受けたのは入社2年目に入った2024年3月だ。

「男女関係なく評価されるのはとてもありがたい。不安もありましたが副店長になってから仕事への意識が変わりました。課題は、まだ経験が足りないため自身で対応に苦慮することが多いこと。男性店長をはじめ周囲とのコミュニケーション、『報・連・相』の大事さを痛感しています。リーダーシップ研修を受けたことで、チームのほとんどが年上という状況の中でも、どう説得力ある伝え方ができるかを学びました」

ベイシア渋川こもち店副店長の泉桃花さん
写真提供=ベイシア
ベイシア渋川こもち店副店長の泉 桃花さん

泉さんは入社以来、バイヤーになることを目標としている。副店長として多くの顧客の声に触れることで、市場のニーズを直に把握できるという。

「商品パッケージに記載されている成分も勉強しています。どんなものが人気で、どんな味を求めているのか。今後は、女性の視点を生かした商品開発にも携わりたい」と目標を新たにしている。