過去の体験がすべて今につながる

若杉忠弘著『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』(かんき出版)
若杉忠弘著『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』(かんき出版)

彼女の想いに応えるように、周りも協力してくれるようになりました。会社は、あえて社内に雑談をしやすいスペースをつくってくれました。部門間のメンバーがお互い交流できるようにしたのです。

また、工藤さん自身も講師となり、若手や管理者に対してリーダーシップ研修やキャリア研修にも、熱心に取り組んでいます。

工藤さんはこれから、AIをはじめとするテクノロジーを心温まる方法で駆使して、さらにお互いを理解し合い、変化を歓迎する組織にしていきたいと考えています。そのために今、自ら率先して、新しいテクノロジーを勉強しています。

黒板に建物を飛び跳ねるビジネスマンを描く人間の手
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

彼女には、やってみたいことが次々と湧き上がり、そのアイディアがどんどん広がっています。工藤さんは、「昔はずーっとくすぶっていたけど、そうした体験がすべて、今のやりたいことにつながっている」と、しみじみ振り返っています。

このように、「自分らしさ」を見つけたいときにはセルフ・コンパッションのアプローチが有効です。もしも自分を見失ってしまったとき、一度立ち止まってこのアプローチを試してみてください。

若杉 忠弘(わかすぎ・ただひろ)
グロービス経営大学院教授

東京大学工学部・大学院を経てBooz Allen Hamilton(現PwCコンサルティング)入社。ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。帰国後、グロービスにてMBAプログラムのディレクター。一橋大学大学院にて1800人を対象とするセルフ・コンパッションの調査・実験を行い経営学博士を取得。米国の「センター・フォー・マインドフル・セルフ・コンパッション」で講師資格を得て、セルフ・コンパッションのエバンジェリスト(伝道師)として活動中。