トラウマは私たちの心身にさまざまな問題を引き起こす
トラウマを負うと私たちの心身に様々な影響が及びます。
まずストレス障害として脳や自律神経、免疫系などに失調が生じることがわかっています。
また、対人関係やソーシャルサポートの欠如によってもたらされる偽の責任意識、罪悪感や自己否定、心理的支配など(ハラスメント)が問題を複雑にします。
メンタル面、社会生活においては、うつっぽい、緊張が強い、不安が強い、自信がない、体調がすぐれない、仕事ができない、コミュニケーションが上手くいかない、なぜか生きづらい、といったさまざまな問題を引き起こします。
さらに、トラウマは、発達障害と似た症状を生みます。近年、トラウマによって引き起こされたそうした症状のことを専門家は「第四の発達障害(発達性トラウマ障害)」と呼んでいます。「自分は発達障害かも?」と思うような症状が、実は、トラウマが原因だった、ということがあります。
自分がトラウマを負っているかどうか、気づく方法とは?
ここまでご説明してきましたようにトラウマは本人も知らないうちにさまざまな症状、生きづらさをもたらします。では、自分自身がトラウマを負っているのかについて気がつく方法はあるのでしょうか?
自分でチェックしてみることは可能です。臨床では「生育歴」といいますが、生まれてから自分の人生の出来事について振り返ってみることで可能性を洗い出すことができます。
まず、家庭の中でストレスになるようなことがなかったか? を確認します。家庭内での不和はチェックポイントの一つです。お伝えしましたように、夫婦げんかは虐待扱いとなるくらいですから、それだけでトラウマを負っていると捉えて間違いない体験です。親が浮気をしていた、別居・離婚をしたという場合も機能不全が生じやすく要注意です。
学校などでいじめを受けていた(成人してからのパワハラ、モラハラも)。女性に特に多いですが、性被害も決して珍しいことではありません。
冒頭でCさんのケースをご紹介した際にヤングケアラーについても触れましたが、子どもの自分が大人の役割を代替するような経験があったかどうか? 家族や兄弟に重い病気や障害があったり、死別などについて親などの大人が適切に対応できていなかった、というような場合も要注意です。
アダルトチルドレンの語源ともなりましたが、親がアルコールやギャンブルなどで依存症であった場合も要チェックです。「宗教二世」の苦しみが最近問題となっていますが、新興宗教に傾倒していたなど親が何らかの偏った価値観を家庭内に持ち込んでいた場合もトラウマを疑う必要があります。
過去の記憶が薄い、あまり思い出せないという場合もトラウマの影響で記憶が思い出せなくなっているというケースがあります。もし、なにか気になる不調、お悩みをお持ちでしたらお時間のあるときに一度ご自分の生育歴を確認してみることをおすすめいたします。
大阪生まれ、大阪大学文学部卒、大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。在学時よりカウンセリングに携わる。大学院修了後、大手電機メーカー、応用社会心理学研究所、大阪心理教育センターを経て、ブリーフセラピーカウンセリング・センター(B.C.C.)を設立。トラウマ、愛着障害、吃音などのケアを専門にカウンセリングを提供している。雑誌、テレビなどメディア掲載・出演も多く、テレビドラマの制作協力(医療監修)も行なっている。著書に『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)、『プロカウンセラーが教える 他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版)がある。