皇室の伝統と存続についても、与党VS野党の争点が
また野田代表、皇室には思い入れがあるようだが、その皇室観はかなり歪んでいる。政界の大勢とかけ離れた常識の持ち主だ。
たとえば共産党などは「皇室の伝統などどうでもいい」と堂々と主張しているが、そういう人達は少数派である。さすがに政界では「先例など無視して議論しよう」などと恥ずかしくて言えない。「ジェンダー平等の時代だから女性天皇・女系天皇を」と言っても、「だったら男が皇后になれないのは差別か?」と言われると、恥ずかしくて二の句が継げない。
一部マスコミでは「愛子天皇論」を鼓吹するが、「では悠仁殿下を後回し、皇位継承権を取り上げる気か?」と聞かれると、意味が分かった後で主張する勇気がある政治家など皆無だ。
こうした常識があるから政界では、「悠仁殿下がいるのだから、悠仁殿下までの継承順位は変えない」が、大勢なのだ。仮に女性天皇・女系天皇を認めるにしても、悠仁殿下の後の話だ(ちなみに、女性天皇と女系天皇は全く違うが、説明は割愛)。
「批判票」として野党に投じる選択肢もあるが…
しかし、野田代表は悠仁殿下までの継承順位を認めるのに「万やむを得ない」と切り捨て。要するに「仕方がないから認めてやる」だ。
経済を破壊すると公言、保守っぽい態度を振りまきながら、この傲岸な態度。少しでも政治や経済に関心がある者なら、自民党にいくら不満でも自民党に投票するしかない。批判票としてその他の政党に投票する選択もあるが……。
ただ、当たり前だが国民多数は政治や経済に詳しいわけではない。一部には、「野田佳彦首相でいいんじゃないか」との声もあるが、そういう声が強くなれば石破首相に退陣を迫れる数字になるかもしれない。
いずれにしても、来年の参議院選挙までは政争の季節が続く。
1973年、香川県生まれ。中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士課程単位取得満期退学。在学中より国士舘大学に勤務、日本国憲法などを講じる。シンクタンク所長などをへて、現在に至る。『並べて学べば面白すぎる 世界史と日本史』(KADOKAWA)、『ウェストファリア体制』(PHP新書)、『13歳からの「くにまもり」』(扶桑社新書)など、著書多数。