「走・攻・守」を意識して3案作る

4 タイトルは最低でも3パターン考える

私の場合、タイトルを考える際は、いつも3パターン作って検討しています。

私が定期的に寄稿している雑誌『プレジデント』の編集者は、担当する企画のタイトルを3案出すようにデスク(編集の責任者)から言われます。

ここで、似たようなタイトルを3つ出しても意味がありません。方向性の違うタイトル案を出すのが、幅広いクリエイティビティを引き出すコツです。

タイトルを考えるときは、野球でよく言われる「走・攻・守」を意識します。これは、野手に必要とされるスキルのことで、「走」が走塁、「攻」が打撃、「守」が守備のことですね。これをタイトルに当てはめると、次のイメージです。

……読者にストレートに訴えかけるもの
……ちょっと過激で挑発的、ぶっ飛んだもの
……テンプレに則ったオーソドックスでマイルドなもの

このようなイメージで、まったく方向性の違うタイトルを3つ作り、アイデアを膨らませます。

アイデアがひらめくイメージ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

危機感を煽る戦術

たとえば男性のビジネスパーソン向けに、「好かれるメール・嫌われるメール」というテーマで記事を執筆する場合のタイトルは、このような具合です。

タイトル例
 なぜ、あなたのメールは感じが悪いのか?
 キモすぎる! 一発アウトな「嫌われるおじさんメール」とは
 これで嫌われない! 「好かれるメール」の書き方4選
東香名子『超タイトル大全 文章のポイントを短く、わかりやすく伝える「要約力」が身につく』(プレジデント社)
東香名子『超タイトル大全 文章のポイントを短く、わかりやすく伝える「要約力」が身につく』(プレジデント社)

これをベースに、メディアの特色や、読者との相性を見つつ、タイトルを決定していきます。

先ほど挙げた雑誌『プレジデント』は、40~50代のビジネスパーソンが読者の中心層です。会社ではベテランとして働き、若い世代とのやりとりも多く発生する年頃です。彼らの中には、若手とどのようにコミュニケーションを取るべきか、悩んでいる人も少なくありません。

そうした読者のために、まず、若い人に嫌がられるメッセージの事例をピックアップしました。さらに、言われたくない言葉であろう「キモい」という言葉をタイトルで目立たせて、危機感を煽る作戦を立てました。それが次のタイトルです。

タイトル例
中年男性が使うと「キモい」と思われる…一発アウトな絵文字10選

記事の反響は狙い通り上々でした。プレジデントオンラインにも投稿したところ、多くのリツイートを集めています。

初心者の方がすぐに「走・攻・守」を意識するのは少し難しいかもしれません。まずは、異なるテンプレを3つ試してみるだけでも十分です。一つのタイトル案にこだわらず、複数のアイデアから本番用タイトルを決めるのが、より「バズる」タイトルに近づかせるコツです。

東 香名子(あずま・かなこ)
コラムニスト

鉄道コラムニスト。メディアコンサルタント。外資系企業、編集プロダクション、女性サイト編集長を経て現在フリー。編集長時代、月間アクセス数を650倍に伸ばす。All About旅行ガイド。メディア出演多数。著書に『超ライティング大全ー「バズる記事」にはこの1冊さえあればいい』ほか。