障害のある方たちは「先輩」になる

そして、活動を続けているうちに「支援する」と「支援される」は固定された関係ではないことにも気づいたという。

「固定しない関係はものすごくおもしろいし、いろんな角度から物事を見せてくれるので教えてもらうこともたくさんある。大人も子どもも、障害の有無に関係なく対等な関係で学び合えたら、画期的なアイデアが世の中にたくさん生まれると信じています」

「私たちは、歳を重ねるごとに自分が持っていた能力をひとつずつ置いていく。聞こえていた耳がだんだん聞こえなくなり、見えていた目がだんだん見えなくなり、速く走れていた足が弱くなる。そういうことを経験していくときに、工夫して乗り切ってきた障害のある方たちは、いろいろなことを教えてくれる『先輩』になります」

撮影=田頭真理子 ©︎ Mariko Tagashira
ホワイトハンドコーラスNIPPONの子どもたちとコロンえりかさん

ホワイトハンドコーラスは「革命」

ソプラノ歌手、社会活動家、大使の妻、4人の子どもの母――。多忙を極めるコロンさんだが、いつも明るい笑顔が印象的だ。

「阪神大震災で、いろんな人が亡くなるのを身近で見ました。人生は計画通りにいかないことがたくさんある。その中でも、毎日命をもらって生きていくものとして、できるだけ幸せに、できるだけいろんなことに感謝して生きていきたいという気持ちがあるんです。日々の小さな幸せの中に、大きな人生の幸せは隠れているような気がしているので」

最後に、音楽とは何かを問い続けてきたコロンさんに聞いてみた。

ホワイトハンドコーラスの音楽って、どういうものですか?

「これは革命だと思っています。音を目で見えるようにできる、音楽を絵や映画のように動かすことができるというのは、まったく新しい音楽の境地を開拓することではないかと思います」

笑顔とともに、革命はまだまだ続きそうだ。

山本 奈朱香(やまもと・なすか)
ライター

京都生まれ。小学生の3年間をペルーで過ごす。大学院修了後に半年間バックパッカーで海外をめぐった後、2006年に朝日新聞社入社。青森総局、東京社会部、文化くらし報道部などを経て2023年に退社。関わった書籍は『「小さないのち」を守る』『Dear Girls』『平成家族』『調理科学でもっとおいしく定番料理』(いずれも朝日新聞出版)。ヨガインストラクターとしても活動。