1980年代後半に総合職として入社した均等法第一世代の大卒女性の中には、早いタイミングで退職して家事、育児に専念した人たちもいる。近畿大学教授の奥田祥子さんは「入社4年弱で退職し、12年間専業主婦だったある女性は、38歳で契約社員として再就職。51歳で正社員になり、定年退職に合わせて、女性のための人材紹介業を立ち上げ独立した」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、奥田祥子『等身大の定年後 お金・働き方・生きがい』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

ゴミを捨てる主婦
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当時の選択に後悔はしていない

大学卒業後、総合職としてメーカーに就職した中本洋子なかもとようこさん(仮名)は4年弱で退職。翌年に27歳で結婚し、家事、育児に専念した後、第2子が小学校2年生に進級したのを機に、かつて勤務した会社の子会社に、契約社員として再就職した。そんな彼女に出会ったのは2003年、再就職から2年が過ぎた40歳の時だった。

「重々ご承知だと思いますが、私は均等法第一世代でありながら、能力を発揮することもできないまま、入社わずか数年で辞めた、よくあるパターンです。本人たちの忍耐力のなさなど世間から批判も受けましたが、私としては真剣に仕事と向き合ったつもりです。理想と現実のギャップに思い悩んだ末の決断だったんです。そんな自分の存在価値を示す手段が、結婚だった。当時の選択に後悔はしていません」

中本さんは取材開始早々、明瞭な口調でこちらをしっかりと見つめて言い切った。りんとした姿勢に少し圧倒された様子が、当時の取材ノートにも記載されている。

12年のブランク経て「再就職」

「再就職しようと思われた理由は何ですか?」

「もう一度、社会とつながりたいと思ったんです。家事、育児に専念していた期間はそれなりに充実していましたし、地域や子どもが通う幼稚園、小学校などで人との交流もありました。でも、そうした狭い範囲のコミュニティを超えた、もっと広い社会にやりがいを求めたと言いますか……。子ども2人とも小学校に通い、近くに住む母親も協力してくれ、ある程度、再び働きに出る環境が整ったので……。ただ……12年間もブランクがあったので、求職活動では苦労しました。結婚や出産を機に退職されて、再就職を希望される場合は、ブランクは数年以内がベターなようで……私の場合は、再び仕事をするかもわからないまま、子育てに追われていつの間にか時間が経ってしまっていた感じで……」