謙遜が行きすぎるとストレスになる

謙遜さんとは、自分を低く見積もって、必要以上にへりくだってしまう人。

いつも他人を優先して、自分はあと回しにしてしまう人。

自分の嫌なところやダメなところならいくらでも挙げられるのに、いい面や好きな部分はほとんど思い浮かばない。そんな人を指します。

謙遜さんのもとになっているのは、「インポスター症候群(Impostor Syndrome)」という海外で話題になっている症状です。

インポスターとは英語で、「詐欺師」や「ペテン師」のこと。

優秀で社会的にも成功しているのに自信がもてない。実力や実績は周囲から認められているにもかかわらず、自分の能力のなさがいつかバレるのではないかと常に恐れている。そんな一連の症状を指し、「周りの人をだます」という意味で使われている言葉です。

この「インポスター症候群」をベースにその気質がある方も含めて、本稿では謙遜さんとお呼びしています。

「えぇ⁉ 謙遜さんってパッとしないイメージだなあ」「損な役回りじゃない⁉」と思ったでしょうか。

でも、謙遜さんはとても客観的で、判断力や思いやりがある人。

いつも周囲を気遣っているので、みんなから「あの人がいてくれるとありがたいな」「謙虚で素敵な人だな」と思われています。

とはいえ謙遜が行きすぎると、本心を抑えて毎日が息苦しくなったり、自分のあら探しばかりして疲れてしまうことも……。

自分を認められず、ストレスを感じるのはつらいですよね。

謙遜さんから卒業すべきタイミングは

もし今あなたが、そんなふうに感じているとしたら、それは「謙遜さんから卒業するときですよ」と教えるサイン。その方法をお伝えして、謙遜さんが自分のもち味を活かしながら、力を発揮できるようお手伝いするのが、この本です。

謙遜さんは人を優先するとお話ししましたが、決して控えめなだけではありません。

自分なりの目標があり、「よりよい自分になりたい」という向上心をもっています。その分、自分を成長させたいと願い、「がんばらなければ」と思う気持ちも強い。それが「今の自分」を否定する姿勢や、謙遜的な態度につながっているだけなのです。

だから、自分のいいところに気づいて、自分自身をそのまま認められるようになれば、世界はガラッと変わります。すでにもっている能力を発揮していきいきと仕事をしたり、いい人間関係を築いたりできるようになります。

心優しい謙遜さんは人と調和しながら、個性を活かして活躍できるでしょう。

おじぎをしている人たち
写真=iStock.com/DavorLovincic
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