投資はやらなくてもいいこと

今年から新NISAで投資を始めた人の中には、今回の暴落で投資がこわくなってしまった人もいれば、狼狽売りしてしまったり、投資自体をやめてしまったりした人もいるでしょう。メンタルにきてしまったという人も少なからずいます。

そんな人は、この機会を自分の投資行動を見直すチャンスと捉えてみてはどうでしょうか。暴落でパニックになったのなら、その理由を考えてみてください。理解が足りなかったのか、身の丈を超えた金額を投資に充ててしまっていたのか、そもそも投資に向いていないのか。

投資は別にやらなくてもいいんです。新NISAも投資を始めたい人にとってはいい制度ですが、本当は気が乗らないのに「周りがやっているから」「乗り遅れたくないから」と始めるぐらいなら、むしろやらないほうがいい。

また、今回のことでメンタルにくるほどつらい思いをしたなら、「こんな思いまでしてやる必要ある?」と自問自答してみて、ないなと思ったらこの機会にやめてしまいましょう。将来の安心を得るためのつみたて投資でメンタルを壊すなんて本末転倒ですから。

早いタイミングで暴落を経験できてよかった

でも、今後もつみたて投資を続けたい、あるいはいったんやめたけど再挑戦したいという人には、先ほどお話しした通り最悪のシナリオを想定して心構えをしておくか、逆に相場をまったく見ないでおくことをおすすめします。

つみたて投資は毎月淡々と機械的に買い続けていく投資手法ですから、日々の値動きは本来必要のない情報。見ることでおかしな行動に走ってしまうぐらいなら、もう見るのはやめたほうがいいと思います。

そして、もし改めて投資に挑戦したいと思うのであれば、今回の経験は授業料と思って今後に生かしてほしいですね。言い方は悪いかもしれませんが、早いタイミングで暴落を経験できて逆によかったじゃないですか。新NISAを始めてまだ10カ月も経っていないわけですから、現時点での損失額もそれほど大きくはないはずです。これが10年ぐらいつみたて続けた後だったら、おそらくもっと大きな衝撃を受けていたでしょう。

つみたて投資は20年、30年と長期スパンで考えるもの。このスパンから見れば、最初の7カ月に起こることなんて大した影響はありません。早いうちにいい機会を得られたのだと捉えて、改めて「自分はなぜ新NISAをやるのか」を見つめ直してもらえたらと思います。

構成=辻村洋子

森永 康平(もりなが・こうへい)
株式会社マネネCEO、経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。その後2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、AIベンチャーのCFOも兼任するなど、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)、『つみたて投資の教科書』(あさ出版)など多数。