バイアスを完全に避けることはできない

情報を鵜呑みにしないようにするあまり、バイアスをできるだけ排除しようと試みる人もいます。

確かにバイアスがかかっていればいるほど、騙される危険性は高まってしまいます。しかし、私たちは多かれ少なかれ主観的に物事を考える性質を持っていて、100%客観的思考ができる人は存在しません。つまり、多かれ少なかれ、誰しもバイアスがかかっているのです。

「自分はバイアスがかかっている」という認識を持って情報に触れれば、それだけで視点が増えることになります。

パソコンを見ながら眉をひそめる女性
写真=iStock.com/AntonioGuillem
疑ってみる(※写真はイメージです)

違う角度からの情報を重点的に集めてみる

「自分だけは大丈夫ということはあり得ない」「バイアスを完全に避けることはできない」ということがわかっていると、「これは正しいのだろうか?」という視点が出きてきます。

ポイントは、自分の視点を知ること。そして、自分の視点とは違う角度から情報を集めてみることです。

例えば、「睡眠時間は8時間が最適だ」という意見があったとします。ショートスリーパーで平均睡眠時間が4時間の人からすれば、「8時間が最適だ」という意見には賛成できません。つまり、この意見には反対という立場に立っていることになります。

そこで今度は、「8時間」という意見に賛成の立場の意見を集めてみるのです。そうすると、その意見を肯定する根拠となる情報がたくさん集まってきます。ネットやSNSで情報を集めるときには、フィルターバブル(※第2回参照)によって、その情報を肯定するものがより多く集まる傾向があります。

岡佐紀子『正しい答えを導くための疑う思考』(かんき出版)
岡佐紀子『正しい答えを導くための疑う思考』(かんき出版)

そこで、自分の立場とは反対の意見を集めるときには、あえて自分の今の立ち位置や考えとは違う人をフォローしてみます。さらに、SNSを使い分けることで多様な意見を集めます。

こうした工夫をすることによって、多種多様な情報を集めることができるのです。

情報を集めて判断するとき、どれくらいの量の情報を集めれば十分検証ができるのでしょうか? 「このくらい情報があれば、現時点での最適解を導き出せる」という目安はあるのでしょうか?

これについては、残念ながら答えはありません。なぜなら、やはり時代によっても立場によっても、最適解は常に変化するからです。

そう考えると、「ここまで集めた情報で考えよう」という判断は、どの時点で行ってもいいとも言えます。「今の判断はこうだけど、3年後、もう一度見たときには判断が違うかもしれない」。このような視点を持つことの方が重要です。

岡 佐紀子(おか・さきこ)
オフィスブルーム 代表取締役、問題解決コンサルタント、デール・カーネギー・トレーナー

大手IT企業を経て26歳で起業。ITに特化した派遣事業、システム開発、コールセンターの運営に携わりながら、近畿大学経営学部で非常勤講師として11年間教鞭をとり、大学ではITスキルやコミュニケーションスキルについての知識を提供する。2006年に教育業に力を入れるために分社し、株式会社オフィスブルームを設立。20年にわたる講師経験を有し、年間200回を超えるペースで研修・講演活動を展開。数万人のビジネスパーソンに対し、眠らせず、参加を促すダイナミックな研修スタイルで高い評価を得ている。主な著書に『人を動かすコミュニケーション力を身につける』(ギャラクシー出版)がある。