噂話に限ったことではありませんが、真偽が不明な話の多くは、具体性に欠けて曖昧であることも多いもの。よくあるのが、「みんなが言っていたから」という言葉です。

この言葉は、よく考えてみると非常に曖昧ですね。そもそも「みんな」が誰を指しているのかがはっきりしません。

ですが、「みんな言っていた」と言われてしまうと、「そうか、だったら正しいのかな?」とバイアスがかかったり、「だったら私も従わなければいけないのかな?」と同調圧力を感じたりしやすいのです。

私たちも、誰かを説得したいときや自分の要求を通したいときに、つい使ってしまいがちな「みんな言ってます」という言葉。気をつけたいですね。

嘘を見逃さないテクニック

明らかに嘘であることを自覚している人の話は、ボロが出やすいもの。

就職活動のとき、履歴書の内容を多少盛ったことがあるという人もいると思います。多少であれば突っ込まれても切り抜けられそうですが、例えば「3日で辞めたサークルだけど、4年間続けたことにした」とか、「ほとんど講義に出席してないけど、皆勤したことにした」というように、明らかに嘘とわかる盛り方をしてしまうと、突っ込まれたときに答えられず、ボロが出てしまいます。

このように、「それが偽である」ということを本人が認識した上で嘘をついているケースは、疑う思考を高めることによってその情報の真偽を確かめることができるようになります。

しかし問題は、その人自身が情報を真実だと信じ込んでいる場合です。本人に嘘をついているという自覚がないため、聞いている側の「この人は怪しい」というセンサーが働きにくいのです。根拠となるデータが正しいと信じ込んでいる人からプレゼンを受けるときには、疑う思考を最大限に駆使しなければなりません。

では、情報を鵜呑みにせず、疑う思考を役立てるためには、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。

「私は大丈夫」が一番危ない

得た情報の真偽を確かめずに、「これは正しいに違いない」と鵜呑みにしてしまう人の特徴として、「私が騙されるはずがない」と過信してしまっていることがあります。

最初のうちは「騙されるかもしれない」と警戒して情報の真偽について慎重に判断しようとしていても、その状況に慣れてくると、徐々に「大丈夫だろう」という油断が生まれます。特に、本書に書いてあるような情報の扱い方や認知の偏りなどの知識を得ていると、かえって油断を増長させてしまうことがあるのです。

オレオレ詐欺などの詐欺被害も同じです。警視庁が2018年に行った調査によれば、オレオレ詐欺の被害に遭った人のうち、「自分は被害に遭わないと思っていた」と答えた方の割合は78.2%。オレオレ詐欺に騙されなかった人がそのように答えた割合は56.8%でした(警察庁「オレオレ詐欺被害者等調査の概要について」)。