ほかに現実的な対案はあるのか

そもそも女性天皇を除外して、いったいどのような手立てによって皇位継承の“安定化”を図るつもりなのか。具体的・現実的な対案はあるのか。

これまでのおもな意見は以下の通り。

「私がベストと思っているのは特別養子縁組。つまり……(旧宮家系の国民男子でもまだ本人に物心がついていない)赤子のうちに縁組を行うことです」(竹田恒泰氏、令和4年[2022年]7月27日のポスト

「愛子内親王殿下と(旧宮家系の)賀陽かや家のご令息とのご縁がよい方向に進んだ暁には……『皇位継承』『皇族数確保』という2つの観点からも、理想的なのです」(八木秀次氏「週刊新潮」令和4年[2022年]3月16日号

「悠仁殿下には……(男子の後継者を確保するために)いっそ学校など行かずに早くご結婚いただくことが何よりに優先事項ではないでしょうか」(倉山満氏『決定版 皇室論』)

まったく現実味がないばかりか、将来における皇位継承の行き詰まりを打開する根本的な対策にもなっていない。そもそも、皇室の方々や旧宮家系男性の人格の尊厳をどう理解しているのだろうか。失礼ながら、ほとんど野蛮としか言いようがない。

当事者の人格を無視したこれらの非人道的な方策が許される余地はあるまい。

結局、女性天皇を排除して男系男子にこだわる理由はない。そのような旧時代的なルールを維持したままで、安定的な皇位継承を可能にする方法もない。

よって、皇位継承の安定化を本気で願うならば道は1つだけ。女性天皇を認めて、“直系長子”でいらっしゃる敬宮殿下が次の天皇として即位できるように制度を改正する、という選択肢しかない。

能登半島地震被災地でのサプライズ

敬宮殿下は、天皇・皇后両陛下が力を合わせて築かれている令和の皇室像を、揺るぎなく受け継いでおられる。そのことを示す事実を紹介しよう。

両陛下は、コロナ禍がひとまず収まると地方へのお出ましを再開され、国民との距離感はより縮まった。特に印象に鮮明な1つは、正月早々に起きた能登半島地震の被災地に、ご自身の負担も顧みられず3月22日と4月12日の2度にわたり、続けてお見舞い下さった事実だろう。

その2回目のお出ましで石川県・穴水町を訪れられた時には、思わぬ出来事もあった。それは、吉村光輝町長のご案内によって、現地の被災状況を視察されていた時のことだ。

深刻な被害の中でも、視察地の近くでたまたま営業を再開していた美容院があった。その美容院では美容師やお客など数人が、手を振って両陛下をお迎えしていた。

その様子に気づかれた天皇陛下は、町長に「声をかけていいですか」とおっしゃって、両陛下お揃いで、わざわざその美容院に立ち寄られた。

これは、まったく予定になかったご行動だった。この時に両陛下をお迎えした人たちは、テレビ局の取材に応えて、興奮を抑えきれないまま、驚きと感激を語っていた。

最高のサプライズだったに違いない。