先送りされ続けてきた皇室典範改正
安定的な皇位継承を可能にする皇室典範の改正は、政治が責任を持って速やかに解決すべき最優先の課題だ。にもかかわらず、これまでいたずらに先送りされ続けてきた。
平成29年(2017年)6月、上皇陛下のご退位を可能にした皇室典範特例法が制定された時に、国会では政府に対してこの問題への速やかな取り組みを求める附帯決議が、全会一致でなされた。
その決議では、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家等について」と検討課題が明記されていた。
しかし政府が設置した有識者会議の報告書が提出されたのは、特例法が施行されてから3年も経過した令和3年(2021年)12月。しかも驚いたことに、その報告書は附帯決議が求めていた「安定的な皇位継承」「女性宮家」についてまったく“白紙回答”だった。
その上、勝手に論点をすり替えて“目先だけ”の皇族数の確保策を提案する内容で、提案された皇族数確保策の中身も問題だらけというお粗末さ。
行き詰った国会の全党協議
しかし国会では自民党などの主導により、問題を抱えた報告書をベースにした協議が開始されることになった。額賀福志郎衆院議長が前のめりな姿勢を見せ、通常国会の会期中での決着が目指された。これはおそらく岸田文雄首相の意向を受けてのことだろう。
しかし、衆参正副議長の呼びかけという形で、全政党・会派が一堂に会して毎週1回のペースで協議を行う全体会議が5月17日にスタートしたものの、翌週の会議でいきなり中断することになった。今後はしばらく、衆参正副議長が各党派の意見を個別に聴く方式に、転換する。
これによって、当初もくろまれていた通常国会中での拙速な決着は、不可能になった。リーダーシップを取ろうとしていた額賀氏としては、とんだ汚点を残したことになる。なぜこんなつまずきが生じたのか。