ナマズやサンマの蒲焼き、ウナギカマボコといった代替商品

2つめはウナギ代替財の開発である。すでにナマズやサンマの蒲焼きがウナギ代替財として商品化されており、日本が誇るカニ代替品、カニカマのようなウナギカマもお目見えしている。

3つめは、ウナギをもっと大きくしてから出荷するというプランである。養殖ウナギの出荷サイズは200g〜300g/尾だが、天然ウナギは1kg/尾以上にもなる。このサイズまで育てれば計算上は1尾のシラスから今の4〜5倍のウナギ身肉が生産できる。だから、シラスの池入れ量を4分の1から5分の1に削減しても供給量は今と変わらない。

出荷サイズを大きくすれば、養殖ウナギで消費量の9割を賄える

これが机上の空論でない証拠として図表2を参照されたい。これは、ウナギ消費仕向け量5.4万トンをシラス段階から遡ってその出自を示したものである。国産シラス10.3トンから生産された国産養殖ウナギは0.97万トンで、総消費仕向け量の18%を占める。0.2gのシラスが出荷時に941倍になっていることもこの表から計算できるので、それで1尾当たりの重量を割り戻すと188gとなる。つまり約200gの国産養殖ウナギを今の5倍、lkg超の大きさにして出荷すれば、国産養殖ウナギ生産量は4.8万トンとなり、皮算用によると現行の消費仕向け量の9割を「日本生まれの日本育ち」で賄える。完全養殖とタッグを組めば自給率100%も夢ではないのである。もういつ輸出禁止されても大丈夫、ワシントン条約恐るるに足らず、である。

山下東子『新さかなの経済学 漁業のアポリア』(日本評論社)
山下東子『新さかなの経済学 漁業のアポリア』(日本評論社)

大型化すると骨や皮が固くなる、重箱やトレーに収まらないなどの難点があり、小売側が渋っているのだが、養殖業者には300g以上で出荷したいという意向がある。さすがに1kgにしたいという意向は聞いていないし、現物を見たこともないが。残りのステークホルダーは流通業者と消費者だが、消費者の意向など、まだ聞いてもらってもいないではないか。

この二者が了解すれば、今養殖中のウナギからでも始められる。飼育期間の延長によって餌代などがかさみ、ウナギの価格はさらに上昇する可能性があるが、それがウナギ需要の減少を通じたシラス採捕量のさらなる削減にも、完全養殖技術と代替財開発の加速にもつながる。

・参考文献
水産庁(2023)「ウナギをめぐる状況と対策について」(2023年12月)より2023年12月20日検索取得
Shiraishi and Kaifu(2024), Early warning of an upsurge in international trade in the American Eel(Short Communication), Marine Policy 29

山下 東子(やました・はるこ)
経済学者

1957年大阪市生まれ。1980年同志社大学経済学部卒。1984年シカゴ大学大学院経済学研究科修士。1992年早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(学術)広島大学。現在、大東文化大学特任教授。