ストーカーから命を守るために

もしストーカー被害にあってしまった場合、一人で行動や判断をすることは絶対にやめてください。信頼できる友人や上司、警察、そして弁護士にすぐ相談してください。

ホテルにチェックインする人
写真=iStock.com/jacoblund
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そしてまずは身の安全を確保する行動を取ってください。今回の事例のようにホテルや友人宅への一時的な避難や引っ越しを行いましょう。そのうえで、相手からの連絡や何かしらストーカー被害の痕跡があった場合、スマートフォンのスクリーンショットを保存するなどして残しておいてください。痕跡を残しておくのは怖いし気分が悪いかもしれませんが、それが証拠になります。証拠がないと、今回の件のように警察に被害届が出せないなどという不利益が生じます。

けっして自力で話し合いをして解決しようとは思わないでください。ストーカーをするような人は得てして「こういう行動をとったら自分が他人からどう思われるか」という視点に欠けています。話し合いをしても平行線に終わるか、被害が拡大する恐れがあります。必ず弁護士等の第三者を入れて、精神的にも身体的にも防波堤となる存在を確保しましょう。

なお、今回の事例では、ストーカー規制法上の行為には当たらないという判断がされましたが、例えば東京都迷惑防止条例では、妬み・恨み・その他の悪意の感情に基づくつきまとい等を禁止していますので、これに該当する可能性があります。

また、今回の事例のように、法律に違反するか微妙でも、警察から口頭で注意をしてくれるケースもあります。

被害者だけで警察に行く前に、弁護士と協議をした上で警察に一緒に行くことで、警察も動いてくれるかもしれません。

普段の行動でできることは、スマートフォンの連絡先に事件にあった時のための相談窓口の番号を入れておくことでしょう。警察署の相談窓口や生活安全課や、警察相談専用電話(#9110)などがあります。また、法務省が運営している「女性の人権ホットライン」や検察庁の「被害者ホットライン」など、支援してくれる窓口は知られてないだけでたくさんあります。

●女性の人権ホットライン
0570-070-810(ゼロナナゼロのハートライン)https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken108
●被害者ホットライン
※連絡は、事件を扱った検察庁又は最寄りの検察庁にhttps://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji11-9.html

何らかの被害にあったときには一人で抱え込むなどせず、できるかぎり周囲に頼って、心身ともに安全な暮らしを取り戻してほしいと思います。

文=土居雅美

鮫島 千尋
弁護士

東京弁護士会所属。鮫島法律事務所所長。犯罪被害者支援委員会委員・紛議調停委員・あっせん人補。日本交渉学会員・全国マンション問題研究会会員。一般社団法人弁護士業務研究所理事。週刊誌・NHK・民放番組等でコメントや番組監修を担当。弁護士向け研修講師を担当。熊本大学大学院(交渉紛争解決実践コース)にて、交渉・紛争解決学、弁護士実務における紛争解決スキルの実用性の研究を行う。現在は、犯罪被害者支援に注力しつつ、多くの民事・刑事事件を対応し、刑事では無罪判決を獲得している。また、対話による円満解決をモットーに、交渉学や紛争解決学の知見を活かし、日々活動を行う。