体の不調はドライアイを疑え
デコボコな目による不調の典型的な例が、ドライアイです。
ドライアイは、単に目が乾くだけでなく、実はさまざまな目の問題を引き起こす“トラブルの温床”。放置すると危険な眼病です。
眼痛や頭痛など目に近い部位の症状のほかに、肩こりや腰痛、全身の痛覚を司る神経や末梢神経の障害、さらには睡眠障害やうつまで併発することがあるのです。
「ドライアイなんて、自分には関係ない」と思う人も多いかもしれませんが、目の乾きや痛み、見えにくさなどを自覚していなくても、じつはデコボコ目になっている可能性があります。「隠れドライアイ」といった状態です。
ですから体の不調を感じたら、まずは目の健康を保ち、「長く・よく視える力」を上げ、常に涙で目の表面を潤すことがとても重要。それは、たった1秒の「完全まばたき」で叶うことは前回詳述した通りです。
老眼の進みを遅らせる涙液交換
涙について、あらためて説明しましょう。
涙は、目尻側にある涙腺でつくられたあと、目を潤し、目頭にある涙点から鼻の奥へ排出されます。目の表面を、涙は一方通行で流れているわけです。これを「涙液交換」といいます。
この涙液交換もまばたきの役割の一つで、しっかりまぶたを閉じきることで、涙液交換も進みます。
完全まばたきで涙液交換がスムーズに行われ、常に質のよい新鮮な涙が目の表面を覆っていると、さまざまな恩恵が得られます。
たとえば、老眼の進行を遅らせてくれるのもその一つです。
老眼の目は、ピントを合わせる調整力が弱くなっています。その状態に加えて、目に涙が行き渡らずデコボコ目の状態になっていると、見ようとするものの像がより見えづらくなります。すると余計な負荷がかかることになり、目が疲れやすくなるどころか老眼が進んでしまうのです。
実際、私が2020年に行なった研究で、「ドライアイの女性は老眼の進みが速い」という結果が出ました。2017年に行なわれた慶應義塾大学の研究でも、近くを見ようとしたとき「ドライアイはなかなかピントを合わせられず、ピント調整が不安定になる」と報告されています。
涙で目が潤い、角膜がなめらかさを取り戻せば、目が本来持っている「ピントを微調整する力」を最大限に発揮できるようになります。目の機能が損なわれず、常に健やかに保たれるため、老眼の進行速度も抑えられるのです。