体の不調はドライアイを疑え

デコボコな目による不調の典型的な例が、ドライアイです。

ドライアイは、単に目が乾くだけでなく、実はさまざまな目の問題を引き起こす“トラブルの温床”。放置すると危険な眼病です。

眼痛や頭痛など目に近い部位の症状のほかに、肩こりや腰痛、全身の痛覚を司る神経や末梢神経の障害、さらには睡眠障害やうつまで併発することがあるのです。

首に痛みを覚える座って仕事をするサラリーマン
写真=iStock.com/Liubomyr Vorona
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「ドライアイなんて、自分には関係ない」と思う人も多いかもしれませんが、目の乾きや痛み、見えにくさなどを自覚していなくても、じつはデコボコ目になっている可能性があります。「隠れドライアイ」といった状態です。

ですから体の不調を感じたら、まずは目の健康を保ち、「長く・よく視える力」を上げ、常に涙で目の表面を潤すことがとても重要。それは、たった1秒の「完全まばたき」で叶うことは前回詳述した通りです。

老眼の進みを遅らせる涙液交換

涙について、あらためて説明しましょう。

涙は、目尻側にある涙腺でつくられたあと、目を潤し、目頭にある涙点から鼻の奥へ排出されます。目の表面を、涙は一方通行で流れているわけです。これを「涙液交換」といいます。

この涙液交換もまばたきの役割の一つで、しっかりまぶたを閉じきることで、涙液交換も進みます。

完全まばたきで涙液交換がスムーズに行われ、常に質のよい新鮮な涙が目の表面を覆っていると、さまざまな恩恵が得られます。

たとえば、老眼の進行を遅らせてくれるのもその一つです。

老眼の目は、ピントを合わせる調整力が弱くなっています。その状態に加えて、目に涙が行き渡らずデコボコ目の状態になっていると、見ようとするものの像がより見えづらくなります。すると余計な負荷がかかることになり、目が疲れやすくなるどころか老眼が進んでしまうのです。

実際、私が2020年に行なった研究で、「ドライアイの女性は老眼の進みが速い」という結果が出ました。2017年に行なわれた慶應義塾大学の研究でも、近くを見ようとしたとき「ドライアイはなかなかピントを合わせられず、ピント調整が不安定になる」と報告されています。

涙で目が潤い、角膜がなめらかさを取り戻せば、目が本来持っている「ピントを微調整する力」を最大限に発揮できるようになります。目の機能が損なわれず、常に健やかに保たれるため、老眼の進行速度も抑えられるのです。