「完全まばたき」で眼圧を下げて緑内障を予防

まばたきの効能は、涙で目を潤し、デコボコ目を改善してくれるだけではありません。

まばたきは、眼球内の圧力「眼圧」とも関係しています。

まぶたの上から目を軽く触ると、風船のような弾力がありませんか。これは、眼球内の液体「房水ぼうすい」が一定の圧力を保って循環しているからで、この圧力が「眼圧」です。

眼圧が高いからといって、視力低下や失明に直接つながるわけではありません。しかし、高い眼圧を放置すると、視神経が圧迫されて損傷し、急激な目の痛みに突然見舞われたり、視野が少しずつ欠ける緑内障に至ることも。ですから、眼圧は高くないほうが望ましいのです。

眼圧の高さと関係するのが「自律神経」の働きです。昼間など活発に活動する時間や、緊張しているときなどに交感神経が優位になると、房水の産生量が増えて眼圧が上がります。

反対に、休息時やリラックスしているときは副交感神経が優位になり、防水の排出量が増えて眼圧が下がります。

したがって、副交感神経に働きかけることができれば、眼圧を下げる効果が期待でき、眼痛や緑内障を遠ざけることが可能なのです。

実は、まばたきは副交感神経に働きかける手段の一つ。

交感神経優位のときは、自然とまばたきが減ります。反対に、リラックスして完全まばたきを意識すれば、副交感神経を優位にすることができるのです。

まばたきは脳の情報処理にも効く

まばたきの重要な役割が、もう一つあります。「脳の情報処理」です。

私たちはものを見るとき、網膜に像が映し出され、その情報が脳に送られて初めて「見えた」と感じます。

「見る」とは、目と脳の連携のたまもので、ずっと何かを見ている限り、目と同様に脳も働いているのです。

脳が回路になり、目元が光っているビジネスマンのロボットのイメージ
写真=iStock.com/Danai Jetawattana
※写真はイメージです

しかし、まばたきをすると、ごく短い瞬間ながら脳は情報の流れに区切りをつけ、その内容をより把握しやすいように整理しています。

句読点のない長文は読みにくく、意味を理解しにくいものですが、文を短くしたり、「、」や「。」で区切ったりすると読みやすくなりませんか。それと同じです。

ですから、まばたきをすると「見える力」が高まるのは、涙が分泌されて目の表面を整えてくれるだけでなく、脳の情報処理が正しく行なわれるからなのです。

構成=鈴木裕子

綾木 雅彦(あやき・まさひこ)
眼科専門医・慶應義塾大学医学部非常勤講師

1982年、慶應義塾大学医学部卒業。1994~1997年、ハーバード大学に留学(医学部研究フェロー)。昭和大学医学部眼科准教授、国立病院機構埼玉病院眼科医長、国際医療福祉大学三田病院眼科准教授などを歴任。慶應義塾大学眼科学教室の研究者として知見を深めながら後進の指導にあたるほか、日本抗加齢医学会評議員などの要職も数多く務める。「ブルーライト研究の第一人者」としても知られる。著書に『視力防衛生活』(サンマーク出版)など。