あなたのまばたきは間違っている?
ところで「まばたきなら簡単。すぐできる」と思っていませんか?
「しょっちゅうまばたきをしているけど、目が乾く」という人もいるかもしれません。
実は、すべてのまばたきのうち5回に1回が、まぶたが閉じきっていなかったり、速すぎたりして“不完全なまばたき”に終わっていると推計されています。
不完全なまばたきの割合が多いと、まばたきによる圧力を十分に受けることができず、涙の油分をつくるマイボーム腺がふさがって機能しなくなり、涙の質が低下することがわかっています。
また、まばたきが速すぎると涙は十分に出ず、眼内にそれが塗り広がりません。
そうです。まばたきは、まぶたの上げ下ろしの回数よりも、グイッと一度、まぶたをしっかり閉じきることが大切なのです。
そこで、ぜひ行っていただきたいのが「完全まばたき」です。
やり方は簡単で、上まぶたと下まぶたを、0.5〜1秒、しっかりくっつけるだけでOK。
現代人のまばたきは、平均0.3秒といわれているので、いつもより少し長めに目を閉じる意識で、ぐいっと1回、まぶたをしっかり下ろしきるようにしましょう。
とはいえ1日に2万回ほどまばたきを、常に意識するというのは現実的ではありません。朝起きたときや昼休み、そして気がついたときにいつでも、この完全まばたきを行ってみてください。
私の患者さんに完全まばたきを1カ月ほどしてもらうと、「よく見えるようになった」と喜んでくださる人がたくさんいらっしゃいます。
デスクワーカーは「極深まばたき」を
長時間デスクワークをしたり、ついついスマホの画面を見続けてしまう人に行っていただきたいのは、完全まばたきよりも長い時間、まぶたをしっかり下ろす「極深まばたき」です。
完全まばたきは、1回0.5〜1秒ですが、極深まばたきは2秒。1時間に1回を目安に毎日行いましょう。
極深まばたきは、とくに若い人におすすめです。
目の網膜が薄い年配の人より、網膜の厚い若い人のほうが目が疲れやすいからです。
一般的に、全身の筋肉は「若い人ほど筋力があり、疲れにくい」という傾向がありますが、目の網膜に関しては逆。若い人は網膜が厚くて感度がよく、目の透明度が高い分、光によるまぶしさから痛みや不快感が出やすい傾向があります。
よく、「歳を取って目が疲れやすくなった」といいますが、実は「若い人ほど目は疲れやすい」。ですから、よく目の疲れを感じる人は、まだまだ若い証拠です。私がしっかりと、保証します。
いかがですか。「たかが、まばたき」と侮るなかれ。
まばたきのおかげで1日2万回、目には自己回復のチャンスが訪れます。
今日から1回でも多く、上まぶたと下まぶたをきっちりつける「完全まばたき」をするよう心がけましょう。
構成=鈴木裕子
1982年、慶應義塾大学医学部卒業。1994~1997年、ハーバード大学に留学(医学部研究フェロー)。昭和大学医学部眼科准教授、国立病院機構埼玉病院眼科医長、国際医療福祉大学三田病院眼科准教授などを歴任。慶應義塾大学眼科学教室の研究者として知見を深めながら後進の指導にあたるほか、日本抗加齢医学会評議員などの要職も数多く務める。「ブルーライト研究の第一人者」としても知られる。著書に『視力防衛生活』(サンマーク出版)など。