「多民族都市東京」が想起させた不安感
アメリカの都市などと比べると、東京は物価も給与も半分、下手をしたら3分の1というのが実感だ。海外旅行もほぼ難しくなってしまった。そんななかで、これまで発展させてきたインフラがあり、さらに格安である日本は、「安くてお得感があるだけ」の旅行先になっている。
押し寄せるインバウンドに対するいらだちがいま、随所で高まっている一方で、日本は安価な労働力として外国人に門戸を開いたばかり。こうして排外主義的な意識がくすぶっているなかで、「多民族都市東京」のステッカーを見て、蓮舫氏を投票先に選ぶ人がいるだろうか。不安を感じる人のほうが多いのではないか。
移民、環境、LGBT問題は、先進国では非常にセンシティブかつ、大きな争点になっている。それを考えれば、やり方としてはあまりに乱暴であった。“正義”と選挙は違うのだ。こうした支持者の暴走を止める必要があったのではないか。
LGBT街宣の影響
また蓮舫氏自身も、LGBT街宣をおこなっている。
LGBTに対する差別は許されない。それは自明である。それに反対する人も今の東京では、もうすでにいないと信じたい。しかしあらためてLGBTを争点としてとりあげるのであったら、自民党が失速した理由のひとつがLGBT理解増進法の制定過程にあったことに、自覚的であってもよかったのではないか。
アメリカのエマニュエル駐日大使や欧州の大使らが法整備の必要性を訴えたり、G7の広島サミットに向けて議論が加速したこともあり、「外圧」に弱い自民党への反感もあった。実際に、LGBT理解増進法の成立を契機に、作家の百田尚樹氏らが立ち上げた日本保守党は、4月の衆議院東京15区の補選でもかなりの票を得ている。「LGBTフレンドリー」を強調することが、反自民層を取り込むかと言えば、必ずしもそうではないのだ。
とくに制定の過程で、法案の中の「全ての国民が安心して生活できること」という文言に反対して、「マジョリティであるシスジェンダー女性(性自認、身体の性ともに女性である人)に配慮する必要はない」と立民の議員や活動家が強く主張したことは、この問題に関心のある女性に複雑な思いを抱かせる結果となった。