「氷河期世代対策」ではなく全世代の就労困難者対策を

にもかかわらず、政府はこの領域に、人材育成支援や就労支援、待遇アップのための施策をせっせとつぎ込み続けている。もちろんそれは効果が薄い。

私は、今まで、就業困難者をサポートしている団体をいくつも見てきた。そのたびに聞かされるのは、「氷河期世代対策ではなく、もっと広く、就業に困っている人たちを助けてほしい」という言葉だ。本当にその通りだろう。どの世代にも就業に難渋する人はいる。ところが、「ありもしない」氷河期世代の不幸な人にばかり、政府は支援を続ける。

この過ちをそろそろどうにかしなければならないだろう。

以上、今回は主に現状分析に力点を置いた。

次回は、大卒時点での「超氷河期」だった人たちが、その後どのように就業していったかにスポットを当てることにする。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。ヒューマネージ顧問。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。