この世代の男性非正規は「非大卒」に偏っている

ちなみに今度は、少数派である男性非正規を「学歴別」で分けて見てみよう。

非大卒:正社員179万人(88.7%)、非正規25万人(12.3%)
大学・大学院卒:正社員139万人(96.5%)、非正規5万人(3.5%)

どうだろう。男性非正規は圧倒的多数の25万人が非大卒であり、大学・院卒に限って言えば5万人しかおらず、実に96.5%が正社員となっている。

ここで少し考えてほしい。就職が一番苦しかった世代(超氷河期世代)とは、金融危機(1997年秋以降)の不況期が学卒期にあたる年代を指す。今の40代後半というと、大卒者なら学卒時期がこの時期に重なる人が過半となる。が高卒であれば、1993~1997年が学卒期にあたるため、緩い氷河期でしかなかった。さらに中卒であれば、1990~1994年卒なので、半分は「バブル」に属する。いずれも「超氷河期」ではないにもかかわらず、非正規の主流になっている。

ここで三つ目の結論が出る。

非正規問題とは、学卒の時期よりも学歴差に起因する。

そう、氷河期世代の非正規問題というのは、性差・学歴差という、どの世代にも共通する普遍的な問題でしかない。

【図表】超氷河期世代の非正規就労者
※図表=筆者作成

大卒氷河期世代は、30代前半までに多くが正社員化

ただ、「現時点で正社員だとしても、過去、長らく非正規就労をしていた人も多く、そのため貯蓄や年金の払い込みが足りないのではないか」と考える人もいるかもしれない。

この疑問にもお答えしておく。少なくとも、超氷河期世代の大卒男性たちは、30代前半までには多くが正社員になっていた。

2023年に40代後半の人たちが、30代後半(2013年)・40代前半(2018年)だった頃の就労状況を以下表にまとめてみた。

【図表】超氷河期世代の就労状況(30代後半からの推移)
※図表=筆者作成

やはり、どの年代にあった時でも非正規は女性が圧倒的多数であり、中でも既婚女性に偏っている構造は全く変わらないのが見て取れるだろう。

一方男性は、30代前半にはすでに正社員割合が9割に達し、非正規就労は30万人台と極めて少数派で、現在と状況に大差はない。

表中、2013年の女性就労数が、正規・非正規とも沈んでいるが、これは、彼女らが当時、子育て年代にあたったためと考えられる。全体を通していえる「大きな違い」とはこの点くらいだろう。