結婚式も新婚旅行も苦痛だった

そもそも千紗さんは一度も、子どもを持ちたいと思ったことはなかった。条件が合わず、お見合い自体の成立が厳しかった千紗さんに、「なかなかマッチングしにくい人なんだけど、どうしてもなら」と会から紹介されたのが、現在の夫だった。

「こんなに長く活動してきたのだから、結果を得ずに引き下がれない。時間と労力をつぎ込んでいたので、とても切実だった。今の結婚相手は交際期間中も合わないなと思ったけれど、私と結婚してくれるならこの人でいいと思って、うっかり結婚しちゃった」

千紗さん、38歳の時だ。結婚式も新婚旅行も楽しいどころか、苦痛に近かった。結婚に当たって千紗さんは、徹底して条件のすり合わせを行った。「お互いの両親の介護は自分が主体となって行う」「家事の分担」「お金の分担」「共通の友人ではない人を家に入れない」などの条件を文書化して、目の前で読み上げ、お互いがサインをした。

結婚式で署名をする新婦の手元
写真=iStock.com/Maria Avvakumova
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真っ先に購入したのが指輪

結婚して真っ先に買ったのが、指輪だった。

「保守的な社風だったので、指輪で“カヤの外”から免除される。いわば、女性の仲間に入れてもらうための結婚でした。彼女たちにとってはそれが正義、独身は行き遅れという価値観。でも、転職した今の会社はプライバシーの詮索はなく、指輪の必要性も無くなっていて、あれ? 私、結婚、要らなかった? って」

結婚当初は頑張って食事を作ったが、意味がないことにすぐに気づいた。共感性のない相手と一緒に食べても、楽しくも何ともない。夫となった人は何かを決めることができず、自分の希望や意見を言語化できないことも、結婚の式場決めでよくわかった。今は彼と離婚の話をする徒労から、離婚は棚上げの状態だ。