株式市場は値動きの大きい状況が続き、新NISAで投資を始めた人の中には不安を抱えている人も多いだろう。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「投資は負けたときに“良い言い訳”ができるかどうかで大きな差が出る。上手に言い訳をしてメンタルを正常に保つためには、先達の知恵が役立つ」という――。
思い悩むオフィスの女性
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「投資格言」には先人達の知恵が詰まっている

投資をしていれば、誰しも、失敗や後悔はあるものです。

そして、そんなときには、「○○だから、仕方ない」などと、ついつい、自分自身に言い訳をしてしまうもの。

一般には、言い訳はあまりしないほうが良いとはされていますが、言い訳によって気持ちが楽になるのであれば、そして、心機一転、気持ちを切り替えることができるのなら、言い訳をすることは決してダメではありません。

むしろ、メンタルを正常に保つ言い訳は、「良い言い訳」とも言えるでしょう。

しかし一方で、やってはいけない「悪い言い訳」もあります。

まず、良い言い訳の代表は、投資格言です。

投資格言とは、投資に関する知識・経験・本質などを、分かりやすく、端的なフレーズにまとめたものです。

とくに昔から語り継がれている有名な投資格言には、先人達の知恵が詰まった含蓄のあるものが多く、また、投資のみならず、生き方の指針となり得るものも少なくありません。

それらを言い訳に使うことは、大いに意味のあることと言えるでしょう。

代表的なものは、以下のものがあります。

頭と尻尾はくれてやれ

大底で買って、天井で売ることができれば、理想的です。

とはいえ、実際には、そのような売買などほぼ不可能で、買ってからさらに下がる、売ってからさらに上がるのが現実と言えるでしょう。

しかし、理想が高い人ほど、そんなときには「失敗した」と後悔し、いつまでもウジウジと、自分を責めてしまうものです。

そんなとき、この格言が絶好の言い訳となります。

ここでの頭と尻尾とは、大底と天井のこと。それを「くれてやれ」ということは、諦めろということ。すなわち、大底・天井での売買を狙うと上手くいかないので、多少の儲け損ないは受け入れろという意味です。

つまり、先人達も、大底・天井での売買など無理だと言っているわけですから、「大底や天井で売買できなくても仕方ない」と素直に受け入れること(正当化すること)ができて、気持ちを切り替えることができるのではないでしょうか。

休むも相場

これといった銘柄が見つからない、相場状況の判断が難しいなどの理由で、なかなか投資ができず、もどかしい思いをしているときには、この格言が絶好の言い訳となります。

意味は、「何もしないという選択肢もある」です。

すなわち、「分からないときは、(無理に売買せずに)いったん相場から離れて、冷静になりましょう」ということです。

今、堅調な相場環境の中で、投資で儲かっている人も多く、取り残されているようで悔しい思いをしている人も多いことでしょう。

しかし、それで焦って安易に投資をしてしまい、損失を被れば、それこそ大きな後悔につながります。

そんなときには、この投資格言を言い訳にして、「冷静に、状況を見極めている状態」を正当化することは、大いに意味があるといえるでしょう。