学級文庫の書籍
給食後の昼休み。子どもたちはそれぞれ好きに過ごすが、2組の子どもたちは「ミカ先生の学級文庫」が好きな子が多い。学校の図書室には入っていないようなおすすめの本をミカ先生が用意してくれているのだ。新しい本や話題の本もあるし、図書室の本よりきれいで競争率が低いので、本好きの子どもたちが群れを成す。
珍しく、今日は、6年1組の子たちが2組の教室を廊下からのぞき込んでいる。「2組ばっかり本がたくさんあってずるい」と1組の子たちが騒ぎだしてしまった。すぐに駆けつけて、「1組の子も借りていいんだよー。ここのノートに名前と借りる本の名前を書いてね」と声をかけたが、結局1組の子たちは文句をいいながら出て行ってしまった。
つまり本を読みたいというより、2組だけずるい、という気持ちが先行していたようだ。やれやれ、とため息をつきながら、ミカ先生は「1組の先生に謝らないといけないな」と思う。これでは、勝手に「シールシステム」を始めた岸川先生に文句はいえない。
修学旅行の下見費用
そこに教頭の吉井先生が暗い顔でやってきた。
「すみません。前に行ってもらった修学旅行の下見なんですけど、やっぱり学年の先生全員分は旅費が出せないんです」
自治体のルールではそこまで細かく決まっていないが、もともとの旅費の配当予算が少なく、学年の先生全員で下見に行く必要はないとの校長先生の考えで、旅費の支給が滞っていた案件だった。
「え、やっぱり1人分しか出せないんですか?」
ミカ先生の隣で岸川先生が不満そうに声を上げた。「そうなんです」と縮こまる教頭をこれ以上責めるわけにもいかないが、納得はいかない。
「トイレの場所とか、何かあったときの避難ルートとか、1人だけみてきても下見とはいえないでしょう。なるべく多くの人数で下見しないと、安心して修学旅行に行けませんよ」と、ミカ先生は以前にも主張したことをもう一度繰り返した。吉井先生は「本当に、その通りです」と頭を下げるけれども、吉井先生は悪くない。
「後で、主任と相談してみんなで割り勘にします」と応じるしかなかった。岸川先生はまだ不満げだったけれど。
家庭訪問の駐車場代
今日は夕方に、学校を休みがちな徳田くんの家を訪問する約束がある。
この学校は校区が広くて、なかには徒歩1時間かけて通学してくる子もいる。バスの便があまりよくないのでバス通学も難しい。そのため、家庭訪問用に、教職員で共有する自転車が1台ある。しかし、今日はタイミングの悪いことに先約があったようで、共有している鍵置き場には鍵がなくなっていた。ミカ先生は仕方なく、自家用車で徳田くんの家に向かった。
駐車場代が自腹になるけど、遅刻しないためには仕方ない。久しぶりに会った徳田くんはいろいろ話したかったようで、1時間たっぷりと会話をしてくれた。徳田くんが学校にきたときに気をつけてみよう、と思うことを、いろいろと聞くことができた。ミカ先生は駐車場に戻って、600円の精算をした。校区内は近距離とみなされ、この駐車場代は請求できない。