腹をくくり自分の役割を受け入れる

無論、これは私のような不器用な人間の体験談から来る、ただそれだけの「おすすめの覚悟」です。日々部下とフランクに接しながら、いざというときには部下の生殺与奪権を持つ者として強く振る舞い、それでも皆の信頼を得てうまくマネジメントができる器用な方であれば、そのようにするほうがよいと思います。

曽和利光『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30 なぜこの言い方がNGなのか』(WAVE出版)
曽和利光『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30 なぜこの言い方がNGなのか』(WAVE出版)

しかし実際のところ、私が人事コンサルタントとしていろいろな会社の組織分析をする中、部下の皆さんが上司について思っていることを聞くと、「うまくいっていると思っているのは上司だけ」という残念なパターンが非常に多く見られます。

自分は役割によってキャラをうまく使い分けているつもりでいても、部下はそれを単なる「二枚舌」だと感じ、「信用できない人」と判定しているかもしれません。

管理職とは、部下とは違って「人の評価をする側の立場」。腹をくくり、自分に与えられたその新しい役割を堂々と受け入れるべきです。あなたのためにも、部下たちのためにも。

【コーナーまとめ】
・上司と部下はいかに同志的な連帯感があったとしても、結局は評価を「する側」と「される側」。
・「嫌われる勇気」を持つことが、管理職の責務。だから部下より高い給料をもらえる。
・管理職は部下を評価をする側の立場。自分の役割を堂々と受け入れる。
曽和 利光(そわ・としみつ)
人事コンサルタント、人材研究所社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。著書に『人事と採用のセオリー』『人と組織のマネジメントバイアス』『「できる人事」と「ダメ人事」の習慣』『コミュ障のための面接戦略』『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?』など。