「女性余り」の東京ブラックホール
地方の男性化と、東京の女性化。現実として若い女性たちは東京を目指す。
しかしその結果出現したのが、若い女性をのみ込んでそのまま老いさせる東京ブラックホールであり、なんと圧倒的に女性が多くて男性の少ない、女性に不利な「女性余り」婚活の実態なのである。
「ツヴァイ」や「サンマリエ」など、さまざまな婚活・ライフデザインサービスを展開する株式会社IBJが、このたび1万人超の成婚者のデータを分析した2023年度版「成婚白書」を発表した。
未婚化の解決という側面から少子高齢化の解決へ繋げたいとして、日本で最も多くの結婚カップルを生み出している同社だが、白書で明らかになったのは、47都道府県別成婚率でダントツの最下位(18.2%)となり、東京一極集中の影響下で圧倒的な買い手市場の激しい競争にさらされた東京の女性の姿である。
IBJはこの結果を、「“男女どちらが成婚しやすいか”を比較すると、就職や進学を機に女性が都市部へ転出し、『女性余り』となりやすい都市部では男性の方が成婚しやすく、『男性余り』が進む地方部では女性の方が比較的成婚率が高くなる傾向がある」と分析する。
東京では女性が余っている。選ぶのは男性の側となって、女性にとっては婚活に不利なレッドオーシャンなのだ。
それでも若い女性はブラックホールに吸い寄せられる
それにもかかわらず、そんな不利な場所へ若い女性たちはわざわざ地方から流入して競争にさらされ、結果的にブラックホールへ吸い込まれていっている……とも解釈できる。
レッドオーシャンでブラックホール、なんだかいいことが一つもないように聞こえる東京だが、それでも全国の女子はハタチ前後で「より幸せな選択肢」を求めて一斉に東京を目指してしまうのだと、そう統計は物語っている。
先ほどの「成婚白書」が教えてくれる良いニュースは、地方では男女成婚率の逆転が起こり、今度は女性にとっての圧倒的売り手市場となっていることだ。
コロナ禍を経たリモートシフトによって労働や情報が都会も地方も関係なく分散を始めたけれど、幸せな人生のスタイルも満遍なく、多様に分散していく時代がやってくれば、日本人は――いや、日本女性は――今よりもっと幸せになれるのかもしれない。
1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。