自己犠牲が生む軋轢

もうひとつ、日本人はほかの人より先に退社することに対して罪悪感をもつことが多いように思います。

これを裏返すと、早く帰ることに対して罪悪感をもたない同僚は疎ましい存在になりかねない、ということになります。「自分の時間を犠牲にしてまで、上司やチームメンバーを優先しなければいけない」という思い込みが厄介なのは、自己犠牲をしていない人はずるいという発想を生んでしまうことでしょう。

ちなみに、アメリカでは定時退社しても問題ありません。なぜなら、勤務時間は定時までと決められており、よっぽどのことがないかぎりその先の仕事は翌日にやるべきだという揺るぎない信念があるからです。

おもてなしのダークサイド

また、あなたの職場にこんな方はいないでしょうか。

いつも険しい表情で机に向かっている上司。近寄りがたく、話しかけづらいオーラを発していて、コミュニケーションも必要最小限です。部下からは「なにを考えているのかわからない」と思われており、敬遠されがち。なにも教えてもらえないまま、部下たちは上司の胸の内を推測するしかありません。

それなのに、当の本人は「部下は自分が考えていることはわかっているはずだ」と思い込んでおり、わからなければ自分から聞きに来るべきだ、とも思っています。

私はこういうタイプを「恐怖のテレパシー上司」と呼んでいます。新しく入社した若い世代にとってはジェネレーションギャップが甚だしく、最悪の上司ともいえるでしょう。

この事例は、実際にわたしたちのリーダーシッププログラムに参加してくれた日本の広告会社で働くある部長のお話です。

彼は、自分の部下が自ら相談に来るべきだと思っていました。そして、それができないチームメンバーを「ダメな部下」だと決めつけていました。自分が若かった頃は自分から積極的にコミュニケーションを図っていたから部下たちもそうするべきなのに、それができていないヤツが悪い、と思い込んでいたのです。

窓の前に立っているビジネスマン
写真=iStock.com/baona
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しかし、もっと深いところでは、彼自身も自分に課題を感じていました。そして部下たちに「もっとビジョンを示してほしい」、「チームのことをちゃんと見て評価してほしい」と言われてなんとかしたいと思っていたからこそ、セルフマネジメントプログラムに参加してくれたのです。