世界経済危機への導火線はすでに着火している

【渡邉】ジムさんが危機のきっかけとなると考える出来事はどんなことでしょうか。どこかの国でデモが起きる、などでしょうか。

【ロジャーズ】危機の発生を順序立てて整理すると、まず何かが破綻し問題を起こします。それは小さな企業であったりします。

リーマンショックの場合、最初にアメリカの投資銀行、ベアー・スターンズが破綻しました。その数カ月後にリーマン・ブラザーズが破綻して、世界中に危機が波及していきました。コロナショックではウイルスへの感染拡大を防ぐために、世界中が国を閉鎖したことが引き金となりました。

次に起こる危機は1929年の世界大恐慌、あるいはその後のすべての危機よりもはるかに大きく悪いものになるのではないかと、私は懸念しています。

ジム・ロジャーズ/渡邉美樹『「大暴落」 金融バブル大崩壊と日本破綻のシナリオ』(プレジデント社)
ジム・ロジャーズ/渡邉美樹『「大暴落」 金融バブル大崩壊と日本破綻のシナリオ』(プレジデント社)

繰り返しますが、過去の危機のきっかけは小さい銀行や企業の破綻でした。最初は小さい銀行や企業がつぶれていき、そこからどんどん大きくなっていきます。着火点は本当に小さいところであることが多いのです。

今、火花は世界のいたるところに出ています。不動産業界を見ても、オーストリアを本拠とする不動産大手、シグナ・ホールディングスが2023年11月に破綻しました。中国でも不動産最大手の恒大集団が実質破綻しました。こうした大手企業の破綻が飛び火する可能性はあると思いますし、その答え合わせができるのは数年後になるでしょう。

繰り返しますが、1930年代にオーストリアで1つの企業が破綻して、そこから大恐慌がはじまりました。もしかしたら、次の危機もオーストリアが発端になるかもしれません。それが大恐慌につながるかどうかはわかりませんが、ステップの一つになる可能性はあると思います。

プレジデントオンラインアカデミーはこちらから
ジム・ロジャーズ氏のインタビューは プレジデント オンライン アカデミー」の動画でもご覧いただけます。

*視聴には会員登録が必要な場合もあります。

ジム・ロジャーズ(Jim Rogers)
投資家

ロジャーズホールディングス会長。1942年、米国生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。73年にクォンタム・ファンドを設立し、ヘッジファンドという手法にて莫大な資金を運用して財を成した。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。『大転換の時代』(プレジデント社)、『世界大異変』(東洋経済新報社)など著書多数。

渡邉 美樹(わたなべ・みき)
ワタミ会長兼社長CEO

明治大学商学部卒。2024年に創業40周年を迎えるワタミグループの創業者として、外食、宅食、有機農業、再生可能エネルギー事業などを展開し独自の6次産業モデルを構築。2011年、東京都知事選出馬。2013年~2019年、参議院議員を一期6年務めた。郁文館夢学園理事長兼校長として教育者の顔も持ち、政府教育再生会議委員なども歴任。公益法人「School Aid Japan」代表としてアジア3地域で350校を超える学校建設や孤児院を運営する。『大暴落』(プレジデント社)、『夢に日付を!』(あさ出版)ほか著書多数。