学んでも、傷つけてしまうことはある

ケアをするためには、必要な知識を調べて学ぶことも重要です。ただ自分の中で悩むだけではなくて、例えば依存症やAC(アダルト・チルドレン)やトラウマといった言葉を「自他を責める」言葉ではなく「自他を生きやすくする」言葉として活用すると、驚くほどたくさんの知識があることに気づけます。

しかし、そうして学び続けても、子どもを全く傷つけないというのは不可能です。誰もが異なる人間ですから、尊重したつもりが傷つけてしまったり、大切にしているつもりが却って嫌がられてしまうことがあります。どんなに頑張っても、大人になった子に憎まれることもあります。

誰にも憎まれない方法などなく、全力を尽くしてもうまくいくとは限りません。

どんな人間関係も、究極的にはコントロールできず、それは親子関係も同様です。

「助けを求めて支えてもらうこと」が一番大切

だからこそ、忘れないでください。毒親にならないためには、ためらうことや学ぶこと、憎まれる覚悟を持つことに加えて「助けを求めること」もとても大切です。

龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)
龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)

誰もが不完全です。弱音を吐いたり、愚痴をこぼしたり、助けを求めていいのです。「もう疲れた」「産まなきゃよかったかも」「自信がない」「怖い」と思う気持ちは自然なことです。

それを子どもにぶつけるのではなく、周りに助けを求めて支えてもらうことが、毒親にならないために一番大切だと僕は確信しています。

そしてその責任は個人だけで果たすことはできません。助けを求められる場所、愚痴をこぼせる場所、弱音を吐ける場所、その制度や文化がなければ、単なる自己責任論です。国や自治体による子育て支援は勿論のこと、DV被害者支援や産休・育休制度、自助団体などによる共助の場も必要です。

実は、僕自身は妻との相談の上、子どもは持たないことを決めています。それでもこういった活動をしているのは、そうした場所を作る責任を、すでに生まれてきた人たちが分有していると思うからです。

これから生まれてくる命にとって少しでも生きやすい社会を作っていく。それによって、すでに生まれてきた人たちも生きやすくなると信じています。

龍 たまこ(りゅう・たまこ)
漫画家

1981年生まれのシングルマザーで、保育士の資格を持つ。3人の子どもを育てている。ライブドア公式ブログ「新・規格外でもいいじゃない‼ シングルマザーたまことゆかいな子ども達」をほぼ毎日更新中。著書に『規格外な夫婦』(宝島社)、『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』(KADOKAWA)がある。

中川 瑛(なかがわ・えい)
「GADHA」代表

妻との関係の危機から自身の加害性に気づき、ケアを学び変わることで、幸せな関係を築き直した経験からモラハラ・DV加害者変容に取り組む当事者団体「GADHA」を立ち上げる。現在は加害者個人だけではなく、加害的な社会の変容にも取り組んでいる。