何かが心に触れたとき…

三つ目の表現は例文から始めましょう。

The last episode of Touch was so touching that I couldn’t stop crying.
(『タッチ』の最終回にすごく感動して、涙が止まらなかった)

漫画や映画、話や出来事。何かが私たちの心に触れる。つまり、感動する。そういった意味でも「touch」がよく使われます。

スピリチュアルな力の受け渡し
写真=iStock.com/NikkiZalewski
※写真はイメージです

特に、人が何かしてくれたことや、人と人との関係に心がほっこりしたというようなときには特に「touch」を使うことが多いです。

同様に、感動したことを表す単語に「move」や「impress」があります。

「move」は「touch」とかなり似たような意味で使うことが多くあります。

I was very much moved by the recent film by Hirokazu Koreeda.
(是枝裕和監督の最近の映画ですごく感動した)

Brittanie was impressed with her son’s piano performance.
(ブリタニーは息子のピアノの演奏に感動した)

「impress」「move」「touch」の違いについてはいろいろ言われていますが、かなり互換的に使われています。

ただ、人に何かやってもらってほっこり心が温かくなった、などは「touch」がおすすめです。ネイティブの自然な英語の雰囲気が出てきます。

「finishing touch」と「magic touch」

最後に「絵画のタッチ」などといったときの「touch」のニュアンスが使われている表現をご紹介しましょう。こちらは少し上級編です。

指や筆が触れる勢いやその感じのことを「タッチ」といいます。「モネの『睡蓮』の曖昧で繊細なタッチ」などというときの「タッチ」のことです。

こうしたニュアンスを使って、たとえば、まさに絵画の最後の仕上げという意味で、「finishing touch」という表現がよく使われます。絵画だけでなく、プロジェクトや作品でも「最後の仕上げ」のことを指す表現です。

Last night, the marketing team was putting the finishing touches to the new product webpage.
(昨晩マーケティングチームは新しいプロダクトのWebページの仕上げ作業に取り組んでいた)

それから、「magic touch」というフレーズもぜひ押さえておいてください。「魔法の一筆」ができるような「特別な能力」のことを指します。

Our team can’t operate without his magic touch.
(彼の特別な力がないとうちのチームは回らない)

Spielberg’s magic touch makes another masterpiece.
(スピルバーグの魔法のタッチで新たな傑作が生まれる)

さあ、今回はせっかく漫画『タッチ』のテーマで来ましたので、少し胸の熱くなるような口説き文句で締めくくらせていただきましょう。

長きにわたって語り継がれる名曲「Only You」で知られる黒人シンガーグループのプラターズ。知る人ぞ知るその名曲に「(You’ve got)the magic touch」(魔法のタッチを持つあなた)というのがあります。

そこからの一説を見てみましょう。

Oh, when I feel your charm
It’s like a fourth alarm
You make me thrill so much
You’ve got the magic touch

こちらを雰囲気を残しながら意訳してみるとこんな感じです。

あなたの魅力を感じたとき
大火事を知らせる第4アラームが鳴ったよう
あなたは本当にどきどきさせる
魔法のタッチの特別な力で

いかがですか。ナチュラルな響きで、ネイティブの懐にスッと入り込む「touch」のフレーズ4カテゴリー。職場での便利な表現や、恋の口説き文句まで。ぜひ実践してみてください!

星 友啓(ほし・ともひろ)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長

哲学博士、EdTechコンサルタント。1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士を修了。同大学哲学部の講師として教鞭をとりながらオンラインハイスクールのスタートアップに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。全米や世界各地で教育に関する講演を多数行う。著書に『スタンフォード式生き抜く力』(ダイヤモンド社)、『全米トップ校が教える 自己肯定感の育て方』『脳を活かすスマホ術 スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』(共に朝日新書)がある。