「Dr.スランプ」という題名がアニメ化の際「アラレちゃん」に
幼稚園の頃、アラレちゃんが大好きだったわたしに父が教えてくれた。
「本当は『Dr.スランプ』っていう漫画なんだよ。でもアラレちゃんが大人気だから、アニメでは『Dr.スランプ アラレちゃん』になったんだ」
女の子キャラの人気が出すぎて、作品タイトルが変わるだなんて! わたしは感動した。少年漫画雑誌に連載されていたのに、その人気で則巻千兵衛博士を食ってしまったアラレちゃん。それくらい鳥山明の描く女性キャラは、イキイキとして主体性があり、やんちゃで魅力的だった。
単なる絵的な「添え物」でもなければ、すべてを受け入れる寛容で忍耐強い「母」でもなく、高嶺の花の「マドンナ」でもない。泣き、笑い、怒り、知恵を働かせ、自分の意思で動いていく女の子キャラクター達。
『Dr.スランプ』は、フランケンシュタインを思わせる人造人間製造シーンから始まる。少女のサイボーグを則巻博士が接続している少しホラーな絵面で、先に完成しているアラレちゃんの頭部が「あ〜たいくつ」などとペチャクチャ喋り、博士がそれをウザったがる。ロボットなのに、いうことを聞かないのだ。
一人称が「オレ」のあかねちゃん、「クピポ」のガッちゃん
当初、博士とアラレは、ゼペットじいさんとピノキオのような、造物主と無垢な存在(タブラ・ラサ)という関係だった。しかし動きはじめたアラレちゃんは、ぶつかるものみなすべて壊す「キーン」というアラレちゃん走りと天才的頭脳、そして底抜けの明るさと怪力とで騒動を引き起こし、すぐさま博士の手には追えないペンギン村の人気者となる。
アラレちゃんの他にも、『Dr.スランプ』には印象深い女の子キャラが数多く登場する。不良ぶってはいるが根はいい子、一人称が「オレ」のクラスメイトあかねちゃん。その姉で喫茶店を経営する、客あしらいの上手い葵ちゃん。アラレの担任であり、則巻博士が恋する相手の山吹みどり先生。
それから「クピポ」と独自言語を話す、空飛ぶ破壊神ともいえる恐るべき赤ちゃん、ガッちゃん。サングラスで三輪車をかっ飛ばし「ナウい」「ダサい」と容赦なくなんでも批評する保育園児きのこちゃん。ちなみに彼女の前髪ぱっつんは、『Dr.スランプ』の連載開始より2年先にパリコレデビューした、当時のコシノジュンコそっくりである。