「外界と調和するつもりがない」というマインド
こうした「外界に合わせる」という考え方には、かなり強い反対の声があります。「外界に合わせていては、その子どもの個性が潰されてしまう」「同調圧力によって、言いたいことも言えなくなる」など。そういう声も一理あるとは思うのですが、最近は以下のような事例に出会うことも稀ではなくなりました。
「嫌がることはさせないでほしい」という園児の母親
【事例:○○ちゃんワールドを大切にしてほしい】
年中の保育園児。みんなが一緒に参加する活動であっても、自分の好きなことをしており、活動に誘っても頑として受け付けない。親に相談すると「○○ちゃんワールドがあるんだから、それを大切にしてほしい」「嫌がることをさせないでほしい」と話す。
この事例の親は、自分の子どもが周囲と違う活動をすることによって、クラスに割り当てられている数少ない保育士の一人が、自分の子どもに付きっきりになってしまうことには考えが及ばないようです。また、残りの保育士が一人当たり見なければならない園児の数が増え、それが取り返しのつかない事故につながるリスクにも興味がないのでしょう。
こういう事例に会うたびに、そもそも最初から、集団に溶け込もうとすることや、集団の中で周囲に合わせて自分を変えることを放棄してしまっている印象を受けます。いわば「外界と調和するつもりがない」というスタンスを堅持しているわけです。
もちろん、発達障害、ギフテッド、その他の特徴の凸凹など、子どもが環境に「調和しづらい」要因はたくさん考えられます。彼らが環境と「調和するつもりがあるけど、調和しづらい」のであれば、周囲の大人は彼らの特徴をきちんと把握し、困難を軽減し、その環境にいやすくするための努力を最大限していくことが重要になります。
ですが、彼らが環境と「調和するつもりがない」としたらどうでしょうか? 自分には個性があるんだ。他の人とは違う自分なんだ。そんな自分を周囲は大切にするべきだ。
自分は変わるつもりがない。そういうマインドを持っている人が、「自分に合わせて環境を変えてくれ」と働きかけてきたとしても、その要求に応じることに戸惑いを覚える方が自然ではないでしょうか。