妻の仕事を評価するようになったきっかけ

そして、ここ三、四年で、母親の態度が急激に変わったという。すっかり、妻の仕事を評価するようになったのだ。「あなたの奥さんは立派で、子どもたちをしっかり育ててくれて、すくすく育っている」などと書かれたLINEを送ってくるようになった。

三歳児神話を信じていた母親が、なぜ、そこまで急激に変わったのか。

本当にしょうもない話なんですけど、妻の経済的もしくは社会的地位が上がり(メディアにも登場するようになったことで)、「あなたの息子さんの奥さん、すごいですね」などと周りから、すごく褒められるようになったわけですよ。それで、妻のことを承認せざるを得なくなったんです。驚くほど評価が変わっています。今や、妻の育児を大絶賛してますからね。僕たちのやり方は何も変わっていないのに、何でそこまで評価が変わるのか。「これって、本当に何なんだろう」とかって、考えちゃいますよね。見ていて、ちょっと気持ち悪いです。

ひょっとしたら、もう諦めたのかもしれませんけど。でも、結局その程度なんです。

男女の性別役割において、三歳児神話なんて、その程度。でも、地方の女性の間では、まだまだ信じられてるんですよね。外で働く男性に対し、女性がどういう立場で支えるかということについての固定観念が残されているのです。男は仕事、女は家事・育児にそれぞれ専念すべきという考えであって、男性だけでなく、女性も男性性に囚われているんだと思います。

小西 一禎(こにし・かずよし)
ジャーナリスト 元米国在住駐夫 元共同通信政治部記者

1972年生まれ。埼玉県行田市出身。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。2005年より政治部で首相官邸や自民党、外務省などを担当。17年、妻の米国赴任に伴い会社の休職制度を男性で初めて取得、妻・二児とともに米国に移住。在米中、休職期間満期のため退社。21年、帰国。元コロンビア大東アジア研究所客員研究員。在米時から、駐在員の夫「駐夫」(ちゅうおっと)として、各メディアに多数寄稿。150人超でつくる「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。専門はキャリア形成やジェンダー、海外生活・育児、政治、団塊ジュニアなど。著書に『妻に稼がれる夫のジレンマ 共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』(ちくま新書)、『猪木道 政治家・アントニオ猪木 未来に伝える闘魂の全真実』(河出書房新社)。修士(政策学)。