仕事以外の「やりがい」が欲しかった

そんな私がアドラー心理学に出会ったのは30歳になる頃でした。

きっかけはコーチングです。

コーチングとは、クライアントが理想や目標を叶えることを目的として、行動や変化を促すためのコミュニケーションです。

対話や質問を通し、クライアントの内側の想いを引き出す手法はカウンセリングに近いです。

私は、会社員として、言われたことしかしていない状況で、今後この先何十年と同じ会社に居続けて、同じ仕事を繰り返すことが幸せなのかと疑問に感じていました。

できれば、趣味とか、お金をもらえなくても充実するようなことで、会社員以外のやりがいを見つけたいと思っていました。

もともと、学生時代は、友人の相談に乗ることが多く、人の話を聴くのが好きでした。そこで、カウンセリングを学んでみようかと考えていたところ、タイミングよくコーチングをやっている知り合いと出会ったのです。

その方は「アドラー心理学をベースとしたコーチング」を提供していました。

それがアドラー心理学との初めての出会いです。

木製ブロックで「コーチング」の文字
写真=iStock.com/Nastassia Samal
※写真はイメージです

受け身だった30代会社員を変えたコーチの質問

当時はすでに『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著/ダイヤモンド社)がベストセラーとなっていて、「アドラー心理学」という名前は聞いたことがあったのですが、詳しくは知りませんでした。

そうして、さっそく体験コーチングセッションを受けることに。

……びっくりしました。自分ひとりで考えていても思いつかないような結論や、自分の想いが溢れてきたのです。

初めてコーチングを受けるとき、私はとても受け身でした。

「私が何もしなくても、コーチが勝手に導いてくれるのかな……」と。

しかし、コーチングは、クライアントにアドバイスしたり、導いたりはしません。

あくまでクライアントがどうしたいかを尊重します。

「あなたはどうしたいの?」
「もし、誰からも何も言われなくて、なんでもできるとしたら、何がしたい?」

そんな質問をされて、とても新鮮な気持ちになったのを今でも覚えています。

なぜなら、今まで「自分がどうしたいか」なんて真剣に考えてこなかったからです。

でも、このコーチングセッションを通して「好きなときに好きな場所にいたい」という自分の本音に気がつくことができました。

同時に、今の働き方では、それは叶わないと知り、自分がどうしたいのかを考えるようになりました。