「言葉」へのこだわり

高橋さんが生み出した「名言」は数知れず。

「思い立ったら、即速行動」
「石橋を叩く前に渡り切る」
「言い訳の天才より、できる天才になってほしい」

つらい日々を支えてくれたのが母の言葉だったからこそ、高橋さんは人の心に響く言葉にこだわる。そうやって、30年かけて生み出した「おせっかい名言」がこの度、「百人一首」ならぬ、「百年一首」というカルタになった。

「誰でも、この言葉を100個覚えるだけで、人生が全然違ってきます。本当にいい言葉が、100枚。これなら遊びながら、覚えられる。言葉の力で、人をいっぱい助けてあげられるなら、私はそうしたいんです」

おせっかい名言を100個集めた「百年一首」
画像提供=おせっかい協会
おせっかい名言を100個集めた「百年一首」

病院より美容院に行こう

フルコースの後半に待っていたのが、再婚だ。高橋さんは49歳で、5歳下の男性と結婚。しかし高橋さんが75歳の時、夫は他界した。伴侶との離別と死別の両方を経験するとは、まさにフルコースだ。起業した会社は娘が代表を務め、今や東証一部上場企業となった。60代は孫育て、70代になり、おせっかい協会を一人で立ち上げた。

82歳間近の今、薬どころか、サプリも補助食品も何も摂らない。手元にあるノートの細かい文字を、老眼鏡なしにスラスラ読む。

「風邪をひいても、ひいていない。健康診断には行かない。行ったら、予備軍にされるから。『病院より、美容院に行こう』です」

出たぁ〜、「おせっかい名言」。パワフルな笑顔に、その通りだと心から思う。

「80代は、一番面白いです」

確信に満ちた、高橋さんの揺るがぬ思いだ。

黒川 祥子(くろかわ・しょうこ)
ノンフィクション作家

福島県生まれ。ノンフィクション作家。東京女子大卒。2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』(集英社)で、第11 回開高健ノンフィクション賞を受賞。このほか『8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語』(集英社)、『県立!再チャレンジ高校』(講談社現代新書)、『シングルマザー、その後』(集英社新書)などがある。